【業界分析:ネット広告(アドテクノロジー)】RTB(Real Time Bidding)の概要や動向

2018.02.22 業界分析

近年、インターネットの発展とともに、それを通じた広告活動が活発化しています。

インターネットを経由した広告活動はテクノロジーとの相性が良く、アドテクノロジー(広告を表すad+技術technologyの造語)という新しい業界を創造するに至りました。

今回の記事ではアドテクノロジーの一般的な仕組みであるRTB(Real Time Bidding)について、業界の概要や動向をみていきます。

 

RTBの概要:一瞬で広告がサイトに表示される仕組みとは?

インターネットを通じた広告活動は、サイトの一部分に広告コンテンツを配信するディスプレイ広告と、検索エンジンの結果に文字広告を配信するリスティング広告が主です。

RTBは、前者のディスプレイ広告を効率的に配信する仕組みの総称を指します。より具体的には、ディスプレイ広告のインプレッション(広告の表示を表す単位)が発生するたびにリアルタイムで広告枠の競争入札を行う仕組みをRTBと言います。

現在、インターネットにおける広告枠は入札方式の課金制度となっており、広告のインプレッションが発生するたびに最も高い入札を行なった広告が配信されるようになっています。この入札制度を支えるのが、RTBという仕組みです。つまり、RTBは特定のツール名を表しているのではなく、リアルタイムでの広告枠への入札を行う仕組み全体のことを指します。

RTBには、DSP(Demand-Side Platform)と SSP(Supply-Side Platform)というツールが用いられます。DSPは広告主の広告効果を最大化するツールであり、広告予算や希望するターゲットを設定するだけで、機械的に広告への入札を行います。SSPはDSPとは対になる存在であり、媒体側の収益を最大化するためのツールです。SSPはインプレッションごとに最も入札単価が高い広告を表示させます。

RTBの仕組みの流れとしては、ターゲットユーザーがサイトを訪問した際に、そのサイトの広告枠に対して広告を表示したいDSPを募集します。その際、サイトを訪問したユーザーの情報がDSPに同時に送信され、DSPはそれらの情報を元にどの広告をいくらで出稿するかを判断し、SSPに出稿希望情報を送信します。SSPはそれらの出稿希望の中から最も高い入札をしたDSPを選び、そのDSPが出稿した広告を表示します。

このようにRTBの仕組みの中では、DSPとSSP双方が連携することで、広告主と媒体側の利害を一致させつつ、瞬時に広告を表示することを可能にしています。

RTBの収益モデルは、DSPとSSPの利用に応じて手数料が発生する仕組みとなっています。DSPの手数料率は広告主が支払う総額に対して30%前後、SSPの手数料率は20%前後が相場となっています。

 

RTBの必要性とは?インターネットの拡大と広告戦略の高度化

RTBの必要性は、主に2点の観点から説明されます。第一に、インターネットの拡大によって、膨大な広告表示を自動的に行う共通の仕組みが求められていたこと。第二に、インターネット広告の効果測定を自動的に行う共通の仕組みが求められていたことです。

まず、第一の観点についてより詳しく説明します。インターネットの黎明期であれば、広告代理店が主要サイトの広告枠を総括して仕入れることや、独自の広告技術を用いることも可能でした。しかし、インターネットの急速な拡大により、広告枠を持つ媒体の数や種類が急増し、従来の手法では効率的な広告配信が難しくなってきます。

実際、ディスプレイ広告はポータルサイトやEコマースサイト、企業のHPから個人のブログまで、無数の媒体に表示されています。このように、膨大な数の媒体で広告を瞬時に表示するためには、リアルタイムで競売を行うRTBの仕組みは理にかなっていると言えます。

次に、第二の観点についてより詳しく説明します。インターネットを経由した広告活動は消費者の広告に対する反応を計測できるため、TVや雑誌といった既存のメディアに比べて広告効果が測定しやすいという特徴があります。この特徴を活かし、消費者データを蓄積し分析することで、より効果的な広告戦略をとることが可能になります。

RTBではDSPがターゲットにあった広告を用意しつつSSPが媒体側の利益も確保するため、消費者一人一人に合った高単価の広告を瞬時に表示することができます。そのため、広告主は媒体側の利益も守りつつ、効果的な広告戦略を取ることができます。

また、近年はDMP(Data Management Platform)などの消費者データを統合し分析することで、ターゲット設定を自動化する仕組みも登場しています。DMPとDSPを組み合わせることで、ターゲット設定を最適化しつつ、狙ったターゲットのみに広告を配信することができます。

 

RTBの市場環境は、ディスプレイ広告の市場環境に依存

RTBはディスプレイ広告の表示を瞬時に行う仕組みなので、その市場環境は当然ディスプレイ広告の市場環境と相関しています。

また、本業界に関する直接の市場規模を示す統計は存在しないものの、他の統計を用いておおよその市場環境を分析することができます。

ディスプレイ広告は現在、リスティング広告に次いで利用されるインターネット広告手法になっています。Ofcomのデータによると2015年のカテゴリー別広告支出額の主要国平均は、リスティング広告が47.0%、続いてディスプレイ広告は30.5%、テキスト広告は16.1%のシェアを獲得しています。当該データはモバイル回線で表示されるインターネット広告を対象としていないため、全ての端末における広告構成比率とは異なりますが、2015年の市場規模1,618億ドルの約3分の1がディスプレイ広告と仮定すると、ディスプレイ広告の世界市場規模は493億ドル程度と推測できます。

また、RTBの概要を説明する際にDSPの手数料率が約3割、SSPの手数料率が約2割としました。したがって、仮にディスプレイ広告が全てRTBを用いた場合、2015年のディスプレイ広告市場規模の493億ドル程度に対しDSP市場は148億ドル、SSPは99億ドルまで市場拡大の余地があると言えます。

 

RTBの競争環境では、M&Aによる競争力の確保が一般的

本業界は、もともとRTBに関連するアドテクノロジーを開発したベンチャー企業が中心となっていました。

そういったアドテクベンチャーでは、他社の買収やIPOを用いて規模拡大を目指すか、大手企業による買収の対象になるかという二つの方向に向かうのが一般的です。そういったIPOを目指した企業は

前者の方向性ですが、2013年から2014年には後述するCriteo(FRN)や、Rocket Fuel(USA)、Rubicon PROJECT(USA)、Tubemogul(USA)といった代表的なアドテクベンチャーが一気に上場しており、IPOが注目されました。

後者の方向性ですが、近年は大手企業による業界再編の動きが進んでおり、注目すべき方向性だと言われています。特に、Alphabet(USA)やFacebook(USA)、Yahoo!(USA)、Twitter(USA)、Oracle(USA)といった大手企業による買収が注目されています。こういった流れが生じている要因としては、ソフトウェア開発やコンサルティング業界、SNSなどの広告業界の大手企業が、日進月歩のRTB業界をいかに早く取り込むかに注力しているためだと言われています。

 

RTB関連企業の動向

ここでは、RTB関連のアドテクノロジーを開発した主要なベンチャー企業を紹介します。ただし、先に述べたようにRTBは業界の再編が進んでおり、主要プレイヤーは今後変化していく可能性があります。

 

Criteo

2005年に創業し、2013年10月にNasdaqに上場している、リターゲティング型のディスプレイ広告の仕組みを主に提供する企業です。消費者に合わせて最適化された広告で、Eコマース企業の広告最適化に貢献しています。

北米、南米、ヨーロッパ、中東、アフリカ、およびアジア太平洋地域に30を超える拠点を持ち、90を超える国と地域に14,000社を超える広告主を持っています。また、オンラインユーザへの月間リーチ数は11億ユーザーを数えます。

 

Rocket Fuel

2008年3月に設立され、2013年9月にNasdaqに上場している、DSPとDMPを中心としたソフトウェアを提供している企業です。独自の人工知能技術により、コンバージョンなどのデジタルマーケティングの効果に対してモデリングを行い、同時に1日あたり220億回のRTBリクエストを処理するとされています。

グローバルに22の拠点を展開しており、日本ではサイバーエージェントと戦略的業務提携を結んでいます。

 

Rubicon PROJECT

2007年4月に設立され、2014年4月にニューヨーク証券取引所(NTSE)に上場している、SSPを提供している企業です。同社はSSPを提供する唯一の上場企業であり、2015年の売上高の76%がSSPを含むRTB事業で構成されています。

同社は2016年に、複数のメディアが閲覧者のデータを共有し、単一のプラットフォーム上で、共同で広告枠を運用するパブリッシャー・アライアンス「DELTA Publisher Alliance」の広告枠を、広告主に提供開始したと公表しました。共有データをDMPに集約して一元で分析・管理し、広告配信ではこのデータを活用します。同社は、このサービスにより広告単価の向上などにつながるとしています。

 

Tubemogul

2007年に設立され、2014年7月にNasdaqに上場している、ビデオ広告を中心としたDSPを提供している企業です。

2011年にDSPをベースにしたオンライン動画広告プラットフォームの提供を開始し、広告費用最適化、効果測定などに強みを持つ米国最大のプラットフォームとなっています。

日本ではデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムがTubemogulおよびその日本法人チューブモーグルと資本業務提携しており、共同で動画RTBサービスを提供しています。

また、Adobeは、2016年12月にTubemogulを同社の負債と現金を差引き5億4,000万ドルで買収しています。