【業界分析:コンサルティング】エキスパートネットワークにみる、新たな知見活用のサービス拡大とコンサルティング業界の変化

2017.10.23 業界分析

国内コンサルティングサービス市場は2016年で6,792億円、そのうち、ビジネスコンサルティング市場は3,625億円、それぞれ高成長を実現しています。今後もさらに成長は継続する見込みで、国内コンサルティングサービス市場は、2016年の6,792億円から、2021年には8,238億円になるとみられています。(IDCJapan

このように成長しているコンサルティング業界において、外部のリサーチ会社やエキスパートネットワークサービス、オンデマンドのフリーのコンサルタントによるサービスなど、特にギグエコノミーの影響によって変革が訪れています。

今回はこうしたコンサルティング市場における新しい動きの中の一つ、エキスパートネットワークサービス市場についてみていきます。

情報の流通化やオンデマンドコンサルの拡大など、コンサルティング業界における変化

コンサルティング業界は基本的には大きな変化もなく続いてきました。しかし、徐々に変革もみられます。

まず、情報がより容易に獲得できるようになりました。そうした背景には、インターネットによってネットでの情報取得が容易になっただけではなく、それらを活用したオンラインでの調査のサービス、他にも業界特化型のリサーチのサービスを提供する企業も増えてきたことがあげられます。

一方で、より専門性が高く、信頼性の高い情報、インテリジェンスやインサイトを与える情報については変わらずニーズは強く、逆に情報自体の取得が容易になったからこそそうしたウェブ上では流通していない情報に対して高い価値が認められています。

コンサルティングファームの最も重要な資産は人材といえるわけですが、コンサルタントとしての活動により、専門性やノウハウが個人に蓄積されていく中、こうした人材についても流動化が進んでいます。すなわち、トップファーム出身のフリーのコンサルタントをプールし、様々なプロジェクトにアサインしていくサービスの市場が拡大しています。

こうしたオンデマンドコンサルともいえるマーケットでは、Eden McCallum(エデンマッカラム)BTG(Business Talent Group)などの欧州や米国でフリーのコンサルタントを1名もしくは複数名でプロジェクトにアサインしていくサービスを提供している会社が近年成長を遂げています。こうした会社は、当初は、小型のプロジェクトやプロジェクトの一部など小さな予算規模のものを受ける傾向にありましたが、現在では、既存の大手ファームと一部競合するようなプロジェクトも受けられるようになっているようです。

最近では、2013年創業のCatalant(元HourlyNerd)や、同じく2013年創業のExpert360なども、比較的若い企業ではあるものの、既に多額の資金調達を実現しており、同様のマーケットで大きく成長を遂げています。

 

活用が広がる外部情報ソース、ガートナー、IDC、IMSヘルスなど

コンサルティングファームやM&Aアドバイザリーを提供する投資銀行の若手の仕事についても変化がみられます。

かつて、1980年代ごろには、当時のマッキンゼーやBCGなどのコンサルティングの大手ファームでのコンサルタントの仕事の多くは、市場や競合企業のデータを集めることでした。

今日では、そうした情報は、ガートナーやIDCなどの外部のマーケットリサーチ企業から取得することも多く、IMSヘルスといったデータベースの会社に発注して情報を取得しています。さらには外部エキスパートとつながるGLGなどのエキスパートネットワークサービスも活用が広がっています。

これらの外部ソースにどういったものがあるかというと、例えばIMSヘルスは医薬品に関する売上・処方・訪問宣伝などのデータ、世界医薬品市場の売上・処方情報を統合したデータベースを提供しています。ガートナーは、IT分野の市場調査に活用され、同社のテクノロジのハイプ・サイクルなどのデータもよく参照されています。IDCもPC、サーバー、ストレージ、プリンターなどのハードウェア、ソフトウェア、サービスなど幅広い分野をカバーする調査レポートを提供しています。

M&Aアドバイザリーに従事する投資銀行のアナリストといった若手の業務の中では、日常的に扱う情報ソースも先述のガートナーなど加え、Bloombergや、最近ではSPEEDAなども財務情報や企業価値評価に利用する情報、マーケットの情報などの取得や加工のために活用されています。

その他、国内企業が提供する情報ソースとしては、非上場企業の分析では帝国データバンクや商工リサーチの企業レポートが活用され、業界情報の情報については矢野経済や富士経済などの調査レポートも参照されています。

外部の情報ソースの情報の質や内容を把握し、いかにアウトプットに結び付けるか

こうした外部の情報ソースが充実していくことで、若手の仕事が容易になったかというと、必ずしもそうはいえません。短期間に効率よく多くの情報を扱えるようになったのかもしれませんが、これからは、どの外部の情報ソースにどういった質のデータが存在しているかを把握し、それらをどのように効率的に収集し、解析し、アウトプットに結び付けるかといった方向に業務の比重が移りつつあるのかもしれません。

こうした外部のデータベースやリサーチ企業を活用することでコンサルタントやアナリストの生産性は上がり、だからこそ業務の内容も変化してきています。

これまではそうした情報の取得自体が容易ではなかったため、情報の取得方法や過去のデータが、ファームの内部に蓄積されていました。ただし、近年では、こうしたナレッジへのアクセスは民主化が進み、情報の取得自体には高い価値はなくなっているといえるでしょう。

さらに、そうしたデータを提供していた前述のようなベンダーも、サービスの提供内容を広げています。各社がリサーチのデータやレポートを提供するだけではなく、強みとしているリサーチを基盤としたコンサルティングなどのアドバイスを提供し始めており、ブティックコンサルファームとしてサービスを始めています。

こうしたIT分野、ハードウェア、ヘルスケアなど各業界ごとに強みをもつブティックコンサルファームとしてもサービス提供しているリサーチ会社。その他にも、様々な業界の有識者へアクセスを確保し、それらの専門家へのインタビューの場を提供することによって情報を取得するエキスパートネットワークというサービスも普及しつつあります。

エキスパートネットワーク市場の拡大。GLGなどの同業界の主要プレーヤー

エキスパートネットワークは、有識者にアクセスし、電話会議や対面での質疑応答によって必要な知見を獲得するサービスです。

同業界での代表的な企業としてはGLG(Gerson Lehrman Group、ガーソンレーマングループ)が最大手として有名です。ほかにもGuidepointThird Bridge、近年成長著しいAlphaSightsなどが、エキスパートネットワークビジネスとして展開をしています。

「1対1で、あるいは小グループという環境で他の人から学ぶというのは、最も効果的な学びの方法であり、想像以上にスケーラブルなのです」とはGLGのSaint-Amand氏のコメントですが、このようなエキスパートネットワークが効率的な学習や情報取得方法として、金融業界やコンサルティングファームを中心に一般化しつつあります。

GLG社は、もともと「価値あるサービスを提供している企業ではあるが、ウォール街以外では誰も知られていない」といわれていました。すなわち同業界は、サービスの規模としては大きくなりつつありましたが、顧客は金融業界にかなり限定されていました。

GLG社はもともとは出版社として、業界レポートを投資家向けに作成する会社としてスタートし、その後、投資家を業界エキスパートと直接結びつけて情報を獲得するサービスとして事業を変化し発展を遂げています。

専門的な情報や業界知識を知見者からリアルタイムで取得することは、こうした情報に対して価値を認め、そうした情報をいかに早く正確に獲得し他社に対して競争力を確保していくことを重要視している金融業界でまずは取り入れられてきたのです。

このようなサービスについては、金融業界以外ではコンサルティングファームでの利用も活発であることは知られていますが、それでも利用される業界は限定的でした。そうした中、近年は金融だけではなく、他業界にも利用が拡大している傾向にあります。

エキスパートネットワークサービスの金融業界以外への市場の広がり

エキスパートネットワークサービスは、ヘッジファンドや投資銀行など金融業界がそうした情報に対しての価値を認め、活発に利用される傾向にありました。それ以外の業種では大手のコンサルティングファームもヘビーユーザーであることは知られていますが、近年は事業会社でも活用が広がっている傾向にあります。

もともと金融機関がメインの顧客基盤だったこともあり、リーマンショックの影響を受けて業界は一時的に停滞しました。これは、2009年にGLG社が同社のそれまで約10年の歴史において、成長を継続してきた中、初めて売上高が減少したことでも明らかです。2008年でGLGは市場の6割を占める業界最大手とされていましたが、市場全体としても、同業界の市場規模は2008年の4.3億ドルから2009年には3.6億ドルと低下したといわれています。

海外では、先述の通り、こうした多くの業界知見者をマッチメイクする企業があります。多くの企業は報酬体系としては月額固定で、大体年間6万ドル程度から始まり、顧客企業によっては年間100万ドル以上の契約をしているケースもあるようです。

同業界では、リーマンショック後には、コスト削減のあおりなどを受けて各社の収益は減少しましたが、その後は市場全体としては再び成長軌道に乗っています。こうした市場拡大は、金融業界以外のクライアントも活用を広げていることも背景にあるようです。例えば、業界大手の収益全体の約3割は、GE社やCisco社などを含む非金融企業からのもので構成されているといわれています。

このように、エキスパートネットワーク企業の顧客基盤として金融業界への依存性は低下し、事業会社含めた活用が広がっていることがわかります。ヘッジファンドやプライベートエクイティやベンチャーキャピタル、グローバルバンク、投資信託会社といった金融関係の他に、製薬会社大手、法律事務所大手、広告代理店、グローバル・インダストリアル企業、グローバル医療機器メーカーなどの事業会社など多様な業種で利用が広がっています。

近年の競争環境の激化、商品ライフサイクルの短期化、技術革新のスピード化、顧客ニーズの変化も早まる中、質の高い情報をいかに効率よく獲得していくのかが企業の競争力確保のためにますます重要度を増しています。事業会社の経営企画や新規事業担当者、M&A推進室なども、こうした情報獲得手段を様々な経路で確保して、リアルタイムの情報やそれぞれの業界関係者の知見をいつでも獲得できるようにしている傾向にあります。

国内でもこうしたエキスパートネットワークの活用は徐々にですが広がっており、通常はアクセスしにくい業界知見者から1対1や電話相談によって情報を獲得することが、情報獲得手段の一つとして日本でも一般化していくと思われます。