【業界分析:宅配便】アマゾンの物流センターと配送網の構築。変化する物流業界

2017.10.16 業界分析

成長著しいEC市場への取り組みが業績を左右

 

2016年国内BtoC-EC市場は15兆円を突破しました(経済産業省)。こうしたEC市場の拡大の中、宅配便も重要度が増しています。国内EC市場で2位を占めるアマゾンの配送については、かつてはヤマト運輸とSGホールディングス(佐川急便)で分け合っていましたが、SGホールディングスは2013年に撤退。現在はアマゾンの配送のほとんどをヤマト運輸が請負っています。一方で、SGホールディングスが撤退した背景には、アマゾンの要求水準が高く、価格交渉が難航した点も報道されています。ECが普及する中では、消費者からは無料配送も当たり前のように考えられています。ドライバー不足の中、時間指定の配達、再配達の課題に加えて、こうしたコスト負担や、価格転嫁についても、業者としては課題が増えています。

企業の物流コストの売上高への比率をみると、日本の物流コストは米国に比べて相対的に低い。日本では特に製造業において、それほど高くない物流比率がさらに下がりつつあるのですが、物流コスト削減への施策として、物流企業とのパートナーシップ強化、モーダルシフトなどがあるようです。

日本では、物流コストは発荷主が負担するというのが一般的なのですが、だからこそ購入側が過度なサービスを求め、これが宅配会社側の負担になっています。

2017年10月には、ファッションECサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」が「送料自由」という取り組みを試験的に開始したことも話題になりました。

これまでは宅配会社側がその大量の配送量確保のためにEC業者に対して値引きをしていました。しかし、こうした負担は大きく、継続は難しくなりつつあります。EC業者による送料無料といった施策も厳しくなり、物流コストの上昇に見合ったサービスレベルや価格転嫁のあり方などを検討していく必要に迫られているかもしれません。

日本と米国での売上高物流コスト比率の推移


出典:日本ロジスティクス協会

 

Q.宅配サービスの今後について。日本では、宅配のサービスも質が高く、必要なものが必要なタイミングで届きます。そのサービスの質を活かして海外へのサービス展開など、今後どういった可能性があるのでしょうか?

花房:物流も国内では先がみえているので、稼げるような物流は海外進出に挑戦しないといけません。海外に出ている物流専門家を見ると、船会社のOBや海外勤務経験者など、アジアをみている人が中心になっているように思います。海外であっても、日本企業を相手にしか仕事をしていないなどのケースも多いです。

他の産業でもいえることですが、やはり日本のサービスはオーバースペック。物流もレベルは高いですが、問題もあると思っています。海外で通用する物流と、日本人が考えている物流は異なり、国内のサービスが必ずしもそのまま現地で通用するわけでもありません。

 

Q.日本での物流サービスが海外でそのまま通用するわけでもないということですね。物流サービスにおいて海外と国内で異なる点としては、例えばどういった点でしょうか?

花房:例えば、包装や伝票の取り方なども異なります。そして国内ではサービス前後のフォローなども多すぎるため、負担が大きい。日本で課題の再配達や受領印記録など、海外では過剰サービスになっています。

 

アマゾンと物流。米国では自前配送を拡大

2017年4月、ヤマト運輸がアマゾン・ドット・コムの当日配送サービスの受託から撤退を検討しているとの報道がありました。ただし、それでもアマゾンが当日配送のサービスをやめることはないとみられており、アマゾンは配送の自前化に動くと考えられています。

アマゾンは国内で年間約3億個の荷物を発送しているとみられ、これは国内宅配便取扱数の1割弱を占めています。既に米国では、日本よりも先行して自前配送を拡大しているというアマゾン、今後は物流の領域でも存在感を増していく可能性があります。

 

Q.物流の領域でも存在感が増している印象のアマゾンについてどのようにお考えでしょうか。報道されている通り、自前で物流をやっていくのでしょうか?

花房:かつて、ベネッセは郵便小包で最も大きな顧客でした、教材の配送が大きかったのですね。確か日本郵便の7割がベネッセだったと思います。ただ今はECが大きな顧客になっていますね。アマゾンは倉庫会社であって運送会社ではありませんが、運送会社を使い分けることができます。

アマゾンは注文をもらった瞬間に何をどこに送るかがわかりますので、物流センターの近場への配達には地域の小規模な業者を利用するでしょう。本来の運送は運送伝票がでてからの仕事、荷物を見てから割り振りをするので、トラックの手配に苦労してきました。アマゾンが注文をもらった情報を早めに運送会社に共有することで、トラックの手配が早まりますし、物流センター近くは業者を指定することができます。

アマゾンはあちこちに非常に大きな物流施設を作っていますから、地域運送会社の組織化や彼らの経営課題を汲み取って、情報の早期提供などの交渉術は心得ていると思います。場合によってはM&Aで地域の物流会社を併合してゆくことも当然あるでしょう。

 

アマゾンの自社の配送網の構築

2017年6月、アマゾンジャパンが独自の配送網の構築に乗り出すという報道がなされています。撤退する方向であるヤマト運輸の代替策として、「当日配送サービス」を専門に手がける個人運送事業者を2020年までに首都圏で1万人確保していく方針のようです。

こうした形で、アマゾンが個人事業者の活用を本格化することで、ヤマトなどの大手に偏っていたネット通販の配送も組織化された個人など小規模の運送業者が受けていく可能性もあります。

また、アマゾンは「プライムナウ」の実施にあたり、消費者に近い場所に小規模な配送センターを複数開設しています。同サービスでは、有料会員向けに1時間以内に配送しますが、地域ごとの小さな配送センターを配置し、顧客への直接配送を実現していくようです。

 

アマゾンの最新の物流センター、ロボットによる商品管理システムの導入

物流センターのシステム化でもアマゾンは先に進んでいます。アマゾンでは、物流センターにロボットによる商品管理システム「アマゾンロボティクス」を導入しています。このシステムでは、倉庫内での配送と商品の保管が両立でき、従来の物流センターよりも効率化されています。

アマゾンは、こうしたシステムを導入した最新の物流センターを川崎市に建設しています。

また、アマゾンは国内で約10カ所の物流センターを運営しています。その中でも最大のものは小田原の物流センターで、2013年から稼働していますが、その床面積は約20万平方メートルに達します。

 

ゾゾタウンの物流機能

また、最近は送料自由化で話題のゾゾダウンを運営するスタートトゥデイも、自社で物流センターを運営しています。完全自社完結型の物流センターと物流システムを「ZOZOBASE」として運営しています。

この「ZOZOBASE」は商品の入荷から、保管や梱包、発送まで、フルフィルメント業務全般を行う物流センターです。物流システムの設計から構築まで自社で行い、迅速で柔軟なオペレーションを実現しています。

アパレル製品であれば、保存が難しい食品や飲料などに比べ、物流施設で在庫化することが可能です、こうしたアパレル製品を扱うECとしての強みを活かした仕組みであるといえます。また、ゾゾタウンは受託販売がほとんどのため、在庫を持つことによるリスクは低く、物流機能を提供することで、ブランド提供企業の負担も低減されます。

ちなみに、こうした物流機能などの提供によって、EC大手の各社の手数料も大きく異なります。楽天市場やアマゾンに比べて、ゾゾタウンの受託手数料率も高くなっています。

Q.物流業界の今後についてはいかがでしょうか?

花房:前提として、国内では人口が減少し、消費が減少するために、今までのままでは、製造業もアパレルも報われないようになっていくと思います。資本効率を考えると、物流センターの中で、売り場も作るし、食品工場をつくるなどしていくのがいいかもしれません。製造、物流、販売の一体化が進んでいくように思います。

日本では工業団地という集積地では工場そのものが減っており、倉庫が増えています。製造業が減っていく中で、物流の倉庫のほうが雇用確保になります。最近では、地方でも工場でなくても倉庫の建設で雇用創出になるので、倉庫が誘致されています。

昔から工場では多くの人が働いて雇用が生まれ、倉庫は人がいないという印象だったでしょう。しかし、今は逆転しています、工場にはロボットが入っていて、倉庫では多くの人が働いています。ロボットなどを使う無人倉庫といっても保管作業のところだけで、商品の出し入れなどは人作業が必要なのです。

日本では大手の物流施設の運営会社グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(GLP)の投資も活発化していますね、大きな物流施設の開発をしています。こうした、外資のファンドなどによる開発も含めて、日本でも物流施設の建設も増えていくと思います。

 

 

プロフィール:花房 陵

1978年慶大経済学部卒、経営・物流コンサルタントとして25年の実績を積む。28業種200カ所以上の物流現場を新規開設・改善指導しており、異業界、異商材の物流施策を導入・定着させることに取り組んでいる。最新のテーマは「コンプライアンス物流」、3PL標準契約やセキュリティ重視の販売に貢献できる高付加価値物流を研究。2012年からは物流専門月刊誌『ロジスティクス・トレンド』の発行者として、物流の普及に努めている。(株)アバンセ 代表取締役、(株)イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 協同組合物流情報ネット・イー相談役、ほか多数の物流顧問に在籍。主な著書『物流リスクマネジメント―止まらない物流、最強のBCP』『戦略物流の基本とカラクリがよーくわかる本』