【業界分析:日本版DMO】日本版DMOとは? 候補法人の動向、登録法人への補助金と地方創生に向けた事例

2018.03.26 業界分析

近年、地域固有の文化や暮らしなどに魅力を感じる個人旅行者が増加する中で、観光地における戦略でも、様々な産業や住民等が一体となって地域を盛り上げる「観光地域づくり」が重要視されています。

今回の記事では、「観光地域づくり」のプラットフォームを創設する取り組みとして、日本版のDMOを紹介します。

 

日本版DMOとは?概要と分類

そもそもDMO(Destination Management /Marketing Organization)とは、一貫した観光戦略を策定し、当該地域の様々な関係者や組織の調整を行うことで、分野横断的な観光地経営を行う組織体を指しています。

そもそもの用語の説明をすると、DMOの頭文字であるDestinationという用語は「旅行目的地」という意味であり、例えば旅行の目的地が「東北地方」な場合や「山形県」である場合もあることから、「旅行目的地」は特定の行政区単位とは限りません。

元々DMOは、主に米国や欧州で普及している組織体であり、「日本版DMO」は海外におけるDMOのあり方を日本風にアレンジさせた概念です。

日本版DMO創設の旗振り役である観光庁によると、日本版DMOとは『地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人』と定義されています。

 

日本版DMOのミッション

観光庁によると、日本版DMOが必ず実施する基礎的な役割・機能として、

  1. 日本版DMOを中心として観光地域づくりを行うことについての多様な関係者の合意形成
  2. 各種データ等の継続的な収集・分析、データに基づく明確なコンセプトに基づいた戦略(ブランディング)の策定、KPIの設定・PDCAサイクルの確立
  3. 関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合性に関する調整・仕組み作り、プロモーション

の3つが挙げられています。

 

また、これら3つの基礎的な役割に追加して、観光地域づくりの一主体として個別事業を展開することも考えられます。

まとめると、日本版DMOのミッションは上記3つの役割・機能を通じて、一貫した戦略に基づく地域一体となった「観光地域づくり」を進めることだと言えます。

観光地域としては、今まで関係主体によってバラバラだった戦略に一貫性が生まれ、地域全体としての収益向上が望めるというメリットがあります。

また、先に述べた通り「旅行目的地」が一つの行政区単位とは限らないことから、日本版DMOは担当する「旅行目的地」の領域により下記の3つに区分されます。

  • 『広域連携DMO

複数の都道府県に跨がる地方ブロックレベルの区域を一体とした観光地域として、マーケティングやマネジメント等を行うことにより観光地域づくりを行う組織

 

  • 地域連携DMO

複数の地方公共団体に跨がる区域を一体とした観光地域として、マーケティングやマネジメント等を行うことにより観光地域づくりを行う組織

 

  • 地域DMO

原則として、基礎自治体である単独市町村の区域を一体とした観光地域として、マーケティングやマネジメント等を行うことにより観光地域づくりを行う組織

 

※広域連携DMO及び地域連携DMOの形成・確立に当たっては、連携する地域間で共通のコンセプト等が存在すれば、必ずしも地域が隣接している必要はありません』

 

(観光庁HPより引用 http://www.mlit.go.jp/kankocho/page04_000049.html

 

日本版DMO登録制度と補助金をはじめとした支援

「観光地域づくり」には多くの公的機関が関わる必要があることから、日本版DMOは基本的には官民協働の運営体制をとっています。

そのため、法人が日本版DMOとなるには登録制度で定められた条件を満たし、登録法人となる必要があります。

また、登録申請の時点で、法人として実際に存在し活動している必要はなく、今後法人を立ち上げる構想や意欲がある場合は構想段階での登録申請を行うことができます。

また、法人形態も様々で、現在登録されている41法人のうち、一般社団法人は27法人、公社は6法人、公益財団法人は3法人、一般財団法人は2法人、株式会社は2法人、NPO法人が1法人となっています。

 

登録要件としては、下記の5つの項目分かれて定められている諸条件を満たす必要があります。

  1.  日本版DMOを中心として観光地域づくりを行うことについての多様な関係者の合意形成
  2.  各種データ等の継続的な収集・分析、データ等に基づく明確なコンセプトに基づいた戦略(ブランディング)の策定、KPIの設定・PDCAサイクルの確立
  3.  関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合性に関する調整・仕組み作り、プロモーション
  4.  日本版DMOの組織
  5. 安定的な運営資金の確保

 

登録法人となれば、内閣府の地方創生推進交付金など補助金による支援の対象となり得ることを始め、関係省庁から豊富な支援を受けることができます。

実際、日本版DMOの立ち上げに向けた事業のうち44事業が地方創生推進交付金の支援対象として認定されています。

例としては、瀬戸内エリアのDMO立ち上げ推進事業である「せとうち観光(せとうちDMO)推進事業」には約1億7400万円、洞爺湖有珠山ジオパークを構成する3町が連携してDMOを立ち上げる「洞爺湖有珠山ジオパーク資源を活用した DMO 観光地域づくりの連携事業」には約9400万円の交付がなされています。

ただし、観光庁によると日本版DMOの組織目的は、あくまで地域全体として利益を生むことであり、日本版DMO自体が大きな収益を上げることではありません。

そのため、関係省庁から得る支援により利潤を増やすことを目的としたDMO登録はできないようになっています。

 

現在の日本版DMOの登録法人と、今後の目標

日本版DMO登録制度は2015年11月に創設されましたが、その後2年間は候補法人の登録のみに留まっていました。

そして、2017年11月に初めての正式な日本版DMOとして、41の法人が登録されました。

その後は新しい登録はなく、現在日本版DMOは広域連携DMO5件、地域連携DMO23件、地域DMO13件の41法人となっています。

一方、候補法人は広域連携DMO2件、地域連携DMO52件、地域DMO79件の計133件となっており、まだまだ正式な登録待ちの法人が多いと言えます。

また、日本再興戦略2016によると、2020年までに世界水準のDMOを全国に100組織作るという目標が設定されています。

目標達成のためには、候補法人の数が133件あることから、今後は高い水準で役割を実行できるDMOの育成が必要になってくると考えられます。