【業界分析:宅配便】モーダルシフトと再配達の削減。変化する宅配便業界の未来

2017.10.05 業界分析

宅配業者におけるサービスの多様化。コンビニとの提携も

ECの展開によって、大きな変化が起きている宅配業界。サービスの多様化が進んでおり、コンビニとの連携もその一つといえます。コンビニは非常に完成度の高い物流システムをもっていますが、近年、宅配事業者やネット通販事業者は、コンビニとの連携を強化しています。

例えば、2015年8月には楽天とローソンが、2015年10月にはファミリーマート(現ユニー・ファミリーマートホールディングス)と日本郵便が、荷物のコンビニ受取サービスを開始しています。さらに、2016年3月、ファミリーマートは、ヤフオクやメルカリなどのCtoCサービス向けのコンビニ発送サービスも開始しています。

アマゾンは、「当日お急ぎ便」について、一部ファミリーマート店舗での受け取り対応を始めています。さらに2016年4月、日本郵便もファミリーマートとの提携を発表しました。海外物流向けのサービスでの提携で、訪日客が日本のファミリーマートから発送した荷物を海外の店舗で受け取ることが可能になりました。

 

再配達の削減についての取組。宅配ボックスの設置

トラックドライバーが不足している中、宅配便の約2割が再配達となっていることが大きな課題となっています。コンビニでの受け取り対応も解決策の一つですが、他に推進されている施策としては宅配ボックス設置の推進があげられます。

2015年10月、国土交通省でも「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」を開催しました。

国交省では、再配達の削減が、ドライバーの労働時間増や、二酸化炭素の排出量増(再配達によって42万トンの増加)といった社会的損失を発生しているため、削減に向けた具体案として、以下の4点を同検討会の報告書でまとめています。

  1. 消費者と宅配事業者・通販事業者との間のコミュニケーションの強化
  2. 消費者の受け取りへの積極的参加の推進のための環境整備
  3. 受け取り方法のさらなる多様化・利便性向上等の新たな取組の促進
  4. 既存の枠組みを超えた関係者間の連携の促進

 

2017年2月に発表したパナソニックによる実証実験の中間結果では、一戸建て約100世帯に宅配ボックスを設置すると、再配達率は49%から8%へと大幅に減少したそうです。

自社配送での小刻時間指定対応で再配達削減を目指す取組も行われています。アスクルでは宅配の再配達削減の施策ですでに「不在持ち戻り率」が一般的な不在率20%(国交省調べ)に対し、約3%となるなど成果をあげています。アスクルの運営する通販サイト「LOHACO(ロハコ)」では、小刻み時間帯指定配送サービス「ハッピー・オン・タイム」を一部地域で開始しています。自社配送による。顧客が1時間単位で配送時間を指定できます。

 

次世代ポストやオンデマンド配送サービスなどの取組

その他にも、アマゾンが住宅用ポストメーカーのナスタ社、日本郵便の3社で開発した「Qual」(戸建住宅用ポスト)と「D-ALL」(集合住宅用ポスト)などは、アマゾンの荷物をはじめ大型郵便にも対応する次世代ポストとして、販売開始されています。また、ドローン宅配便についても実証実験などが進められています。

2016年7月20日、ヤマト運輸と、ディー・エヌ・エーは、次世代物流サービス「ロボネコヤマト」の開発に向けた実用実験に取り組むことを発表しています。「ロボネコヤマト」は、自動運転技術を宅配便の配達に活用するためのプロジェクトで、「オンデマンド配送サービス」と「買い物代行サービス」の実用実験を予定しています。

 

鉄道輸送などに変更する「モーダルシフト」

ドライバー不足のトラック輸送に対して、他の輸送手段、すなわち鉄道や海運による輸送に変更する「モーダルシフト」の取組も進められています。

また、政府もモーダルシフトに取り組む企業を補助金等で支援をしています。配送などをトラックから切り替える企業も増え始めています。

輸送機関別分担率(トンキロベース)2014年度

輸送機関別分担率(トンベース)2014年度


Q.ドライバー不足の一つの解決策でもあるといえるモーダルシフトは今後も進んでいくのでしょうか?

花房:ドライバー不足でモーダルシフトも増えるかもしれないが、駅に持っていく、船に積む、そうしたところはトラックがやるしかありません。結局、電車でも船でも、前後にはトラックがないと困る。船も運行航路が決まっていますし、トラックで一貫して輸送した方が、ドアトゥードアでは一番早いことも多いです。特に、現在の日本の物流への価値観、すなわち「時間に遅れず正確に届ける」という高い要求の下では、モーダルシフトは難しいでしょう。モーダルシフトが拡大するためには、炭素税(燃料税)や排出ガス削減の規制などのより強制力がないと難しいかもしれません。

 

このように、モーダルシフトでカバーできないのが「ラスト1マイル」です。鉄道を使ってある駅から目的地の駅までは輸送が可能ですが、最終的に届けるには、短い距離でも結局はトラック輸送を使用することになります。

時間に正確な価値観、とありましたように、国内の配送システムは、時間指定が当たり前となっています。「物流システムの人材不足は避けられないため、より時間指定に幅を持たせるなどをしないと、国内の物流システムは破綻してしまう」といった声もあります。

 

プロフィール:花房 陵

1978年慶大経済学部卒、経営・物流コンサルタントとして25年の実績を積む。28業種200カ所以上の物流現場を新規開設・改善指導しており、異業界、異商材の物流施策を導入・定着させることに取り組んでいる。最新のテーマは「コンプライアンス物流」、3PL標準契約やセキュリティ重視の販売に貢献できる高付加価値物流を研究。2012年からは物流専門月刊誌『ロジスティクス・トレンド』の発行者として、物流の普及に努めている。(株)アバンセ 代表取締役、(株)イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 協同組合物流情報ネット・イー相談役、ほか多数の物流顧問に在籍。主な著書『物流リスクマネジメント―止まらない物流、最強のBCP』『戦略物流の基本とカラクリがよーくわかる本』