【業界分析:人材紹介】紹介手数料および有効求人倍率に基づく市場規模の推移。主要プレイヤーによる海外進出や事業多角化の動向

2018.03.06 業界分析

人材紹介業の区分とは

人材紹介業とは、労働者を求める企業へ求職者の斡旋を行い、企業から紹介手数料を得る業態を指します。

本業界の市場規模である紹介手数料は、求職者と企業間で雇用が成立する際に支払われる成果報酬方式が採用されることが一般的です。

 

人材紹介業は、人材の紹介手法により、一般紹介型(登録型)とエグゼクティブサーチ型(サーチ型)に分類することができます。

 

登録型は、登録してある求職者の中から求人企業にマッチした人材を紹介する業態です。

最もポピュラーな業態であり、一般紹介型とも言われます。ミドル層以上のエグゼクティブ人材は少ないため、実務層の採用に向いている方法とされています。

 

サーチ型は、求人企業からの依頼を受けて人材を探し出し紹介する、いわゆるスカウトやヘッドハンティングと呼ばれる業態です。

人材紹介会社のネットワークを用いて現在転職を希望していない人材も含め、企業が求める人材を探します。

登録型が苦手なエグゼクティブ人材に強い手法と言えます。

また、成果報酬紹介手数料の他に、人材を探し始める時点で手数料を支払う着手金方式が取られることもあります。

 

また、人材紹介業はその事業形態により区別することもできます。

区別としては、① 営業・技術から事務まで幅広い人材紹介を主な事業として展開する総合人材紹介型、② インターネットや求人情報誌上での人材紹介を通じて広告費を得る広告型、③ 特定の業界への人材紹介を主な業務とする業界特化型、④ 人材派遣を主だった業務としながら人材紹介業界にも進出する人材派遣兼業型の4つに分類できます。

 

企業の求人意欲上昇と規制緩和により、好調に推移する人材紹介業界

人材紹介業界の市場環境の良し悪しは企業の求人意欲に左右されます。

そのため、市場規模は有効求人倍率にある程度依存することになります。

厚生労働省職業安定局『職業紹介事業報告』によると、2008年度から2009年度は急激に手数料収入と有効求人倍率が減少していることがわかります。

具体的には、2008年度の手数料収入は約2,611億円であるのに対し2009年度の手数料収入は約1,861億円となり、2008年1月の有効求人倍率(季節調整値)は0.97であるのに対し2008年12月の有効求人倍率(季節調整値)は0.44となっています。

その背景としては、2007年の景気後退により有効求人倍率が減少に転じ、リーマンショックによる雇用調整で減少が加速したことが挙げられます。

一方、2010年度以降は回復、その後は一度も減少することなく増加しています。

手数料収入額は、2015年度には前年比1.4%増の約3,535億円となっています。

2010年以降の堅調な回復の背景として、景気回復や人手不足により、企業の求人意欲が上昇していることが考えられます。

今後の市場環境を考える上では、労働市場の流動化や労働者の少子高齢化、企業のグローバル対応などが、国内における人材の需要にどう影響するかが重要な論点になると考えられます。

また、2018年1月現在、金融庁が、地方銀行の業務として人材紹介業が展開できるように規制を緩和する方針を検討しており、規制緩和による新規プレイヤーの参入も市場環境に影響を与えることが予想されます。

 

主要プレイヤーは海外進出や事業の多角化を推進

ここまでは国内における人材紹介業界について紹介しましたが、近年は国内市場の縮小や日本企業の海外進出の加速を受け、大手人材紹介企業の海外進出や事業の多角化が進んでいます。

 

リクルートホールディングスの取り組み

リクルートホールディングスは、中国のほか香港、シンガポール、インド、ベトナムでの人材紹介事業を展開しています。

また、リクルートホールディングスグループは海外進出の足がかりとして、海外企業の買収を積極的に行なっています。

2012年9月には、世界50カ国以上で展開し、28言語に対応する求人専門検索エンジン「indeed」を運営する米国のIndeed(USA)を買収しました。

また同社は2014年10月に上場して調達した約1,000億円の資金を活用し、北米、欧州、オーストラリアなどで人材派遣会社の買収を進めています。

オーストラリアではPeoplebank(AUS)とChandler Macleod(AUS)、米国ではAtterro(USA)、オランダではUSG People(NTL)を子会社化しています。

 

パソナグループの取り組み

パソナグループは、2012年に伊藤忠商事・日本航空系の人材派遣・紹介会社のキャプラン、2014年に医療系人材派遣・紹介会社のメディカルアソシア、2015年にパナソニックの子会社パナソニックビジネスサービス、インドネシアの総合人材会社Dutagriya Sarana(デュータグリヤ サラナ、IDN)を買収しています。

 

パーソナルホールディングス(旧:テンプホールディングス)

また、テンプホールディングス(現パーソルホールディングス)は、2013年にアルバイト情報誌anや人材紹介事業などに強みを持つインテリジェンスを完全子会社化した後も、2015年にパナソニックエクセルスタッフ、P&Pホールディングス、ベトナムの大手人材サービス会社First Alliances(ファーストアライアンス、VNM)を子会社化しています。

また、2017年7月よりテンプホールディンスからパーソルホールディンスに商号を変更、グループ会社も「パーソル」を商号に含め、買収により拡大したグループ全体のブランドを統一しています。

 

エン・ジャパンの取り組み

エン・ジャパンは、海外の人材紹介会社の買収によって海外事業の強化を図っています。

2012年にCalibrate Recruitment Pty Ltd(キャリブレート、AUS)、2013年にベトナム最大の求人サイト及び人材紹介を展開するNavigos Group(VNM)をはじめとして、同年にThe Capstone Group Recruitment and Consulting(現 en world Recruitment)(THA)、2014年にNew Era India Consultancy(IND)を買収しています。

なお、国内事業については新卒分野を強化しており、スタートアップであるSOOLとの資本提携により2014年に新卒人材マッチングなどを行うINNOBASEを立ち上げ、2015年に学生向けインターンシップサイトを運営するアイタンクを子会社化しています。

 

テンプホールディングスやエン・ジャパンの買収例を見るとわかるように、ASEAN地域への進出が特に活発になっています。ASEAN地域は日系企業の進出が多く、欧米系企業や現地企業からの人材需要も拡大傾向にあり、各社が事業強化を図っています。