【業界分析:市場調査サービス市場】調査手法はネット調査へシフト。市場調査業界の市場規模と動向

2017.07.22 業界分析

新規事業や事業開発、商品開発などについて、企業が意思決定していくためには、市場・製品・価格・広告・販売・販売経路などについての情報を収集し、分析していく必要があります。そのためには市場調査のサービスを利用している企業も多い。そうしたサービスを提供する企業からなる市場調査の業界はどのようになっているのでしょうか。

市場調査業界とは。「パネル調査」と「アドホック調査」

市場調査企業は、顧客企業に対して、顧客満足度調査、競合調査、ブランド調査などを実施します。

調査には手法があるのでしょうか。調査手法は大きく分けて「パネル調査」と「アドホック調査」の2つに分けられます。

パネル調査は、対象を固定して継続的に調査する方法です。代表的なのは視聴率調査などです。ある調査対象の内容が、時間とともにどのように変化していったかを見ることができます。目的に応じて職業、年齢などの情報から対象者を絞り込むことも可能です。

一方でアドホック調査は、調査設計・調査票の設計などカスタマイズされた単発の調査で、特定対象についてピンポイントで分析できます。例えば、マクロミルが行うインターネットリサーチは、アドホック調査に分類されます。

近年の業界のトレンドとしては、インターネット調査への調査手法のシフトがおきています。インターネット調査は幅広いモニターに対して、低コスト・短納期で提供できるという利点があり、多くの事業者が注力をしています。

注目されている消費者のスマートフォン利用動向

ここ数年、スマートフォンの普及により、消費者のスマートフォンの利用動向を理解していくニーズも拡大しています。

当然ながら市場調査企業もこれらのトレンドに注目しています。同市場におけるグローバルトップのニールセンは、2017年3月にPCとスマートフォンの利用実態をまとめたレポート「Digital Trends 2016」(ニールセン デジタル株式会社)を公開しています。

さらに、同社は2017年5月には日本を含む世界23市場でTwitter対応の「デジタル広告視聴率」サービスを開始しています。アプリやウェブサイトの利用時間や利用頻度などの利用動向データを調査会社が提供をしています。

このようにインターネットやスマートフォン、SNSの普及によって、市場調査も変わりつつあることがわかります。

ネットリサーチが市場を牽引。市場調査業界の市場規模

日本の市場規模(2015年度)は1,946億円。2014年度に比べて、3.2%増加となっています。調査手法ごとに見た場合、パネル調査が642億円、アドホック調査が1,208億円となっています。(一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会)

アドホック調査の中でもインターネット調査が2010年度の430億円から2015年度は607億円とこの数年で大きく伸びています。一方で、アドホックの既存手法の調査は減少し、2014年度からはインターネット調査が既存手法を上回っています。

調査手法別市場規模推移

出典:一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会

ゆっくりではあるが徐々に市場は集約。市場調査企業の規模分布

市場調査業界はどういった規模の会社で構成されているのでしょうか。日本マーケティング・リサーチ協会の104社について売上高規模の分布をみてみると、2015年度で調査業務の売上高21億円以上が19社、5億円台以下の会社が69社となっています。

2011年度からの比較でみると、21億円以上の会社は2011年の16社に対して2015年は19社、売上6億円未満の会社は2011年の81社に対して2015年69社と、徐々に小規模な会社が減少し、大規模な会社が増加、集約が進んでいるようにもみえます。

一方で、上場企業では、インテージホールディングスや近年上場したマクロミルといった売上高100億円を超える企業もあります。事業としてみた場合、パネル調査は、継続するために安定的な収益が期待される一方で、アドホック調査の企業では単発のカスタマイズ調査であるために業務の標準化が難しく、調査員のスキルが求められます。

売り上げ規模別社数分布(2011年度)

売り上げ規模別社数分布(2015年度)

出典:一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会

市場調査の顧客企業は製造業、マスコミや広告代理店

どういった企業が市場調査の依頼をしているのでしょうか。取引先業種として大きな割合を占めているのが製造業です。中でも医薬品や化粧品など消費財が2割近くを占めています。他には、マスコミや広告代理店が主な取引先です。海外に比べると、日本は広告費に対するマーケティング・リサーチの割合が低いといわれていますが、やはり消費財メーカーや広告代理店などが市場調査を積極活用しているようです。(一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会)

海外との取引状況についてみてみると、海外からの発注については前年度から減少しているのに対して、受注についてはここ3年で安定的に伸びていることが分かります。

海外からの受注金額推移

海外への発注金額推移

出典:一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会

次回は、こうした市場調査企業が感じている経営課題や業界の今後について述べていきます。