【業界分析:市場調査サービス市場】マーケティング・リサーチ業界における経営上の課題

2017.07.22 業界分析

マーケティング・リサーチ業界における経営上の課題

集約がゆっくりと進んでいると思われる同業界。2013年の米投資会社のベインキャピタルによるマクロミルの買収の時にも、同業界における市場の成熟化に伴い、成長余地が限られてきている中での意思決定と考えられています。

このような市場において、各社はどのような経営課題に直面しているのでしょうか?

一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会の資料から、それぞれの企業の直面している課題について、2011年度と2015年度の経営上の課題についての変遷をみてみましょう。

もっとも大きな課題は、「調査価格安」、次に「中堅リサーチャー不足」、「売上不振」と続きます。一方で、2011年度で高かった過当競争といった課題は、2015年度ではかなり低減しています、前回の記事でわかる通り業界での集約が進展していることから競争環境は若干軽減されているのかもしれません。一方で「求人難」が2011年度(12%)から2015年度(35%)に大きく伸びていることがわかります。

マーケティング調査業界における経営上の課題(2011年度及び2015年度)

出典:一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会

近年で、マーケティング・リサーチ業界における経営上の課題として多くの企業があげるものは、「中堅リサーチャー不足」(2015年度で54%)や「コンサルティング力不足」(同27%)、「社員の調査スキル不足」(同31%)。すなわち、内部の調査員のスキルに関する課題が相対的に高い印象を受けます。

今後、質の高い調査などの提供が必要になっていく中で、調査スキルの維持と確保が業界内での競争力維持のためには重要なのかもしれません。

グローバル市場に見る日本のマーケティング・リサーチ業界

マーケティング・リサーチ市場をグローバルでみると、日本市場の特異性が浮き彫りになります。

マーケティング・リサーチ業界のグローバルの市場規模(2013年)をみると402億米ドル。近年でも大きく伸びているわけではないものの、市場も安定的に成長していることがわかります。

グローバル市場調査の市場規模の推移

出典:ESOMAR INDUSTRY REPORT 2014

国別でみると、1位のアメリカの市場規模が圧倒的に大きい。次に、イギリス、ドイツと続き、日本は5番目に位置していますが、日本のGDPからみると他国に比べて小さく見えます、これは、市場特性によるものか、もしくは成長余地があるかもしれません。

マーケティング・リサーチ業界における国別市場規模(2013年度)

出典:ESOMAR INDUSTRY REPORT 2014

さらに、広告と市場調査の関係を国別で比較してみると興味深いことが分かります。広告費における市場調査の割合順で見た場合、日本は4.6%で10番目と相対的にかなり低い位置にあります。比率の大きい、欧州のイギリス20.6%、フランス16.1%や、市場規模が最大のアメリカの9.5%と比べても非常に小さいことがわかります。

すなわち、日本では、広告において、他国ほど市場調査があまり重要視されていない、もしくは必要とみなされていない傾向にあるのかもしれません。

広告費に対するマーケティング・リサーチの売上比率(2013年)

出典:ESOMAR INDUSTRY REPORT 2014

クライアントの業種からみる市場調査業界

グローバルと日本で、市場調査の依頼主である取引先企業を比較してみましょう。

日本では、広告代理店が市場調査を実施している割合が海外と比べると突出して高いことがわかります。日本に比べると、海外ではメーカーからの直接の依頼が多い一方で、広告代理店のシェアは非常に低い。その他、アメリカではメディアからのシェアが大きく、イギリスでは電信・電話が大きいといった国ごとの特徴もあります。日本の市場調査大手のマクロミルも電通と合弁会社を設立しているなど、これらの大手広告代理店が調査会社との深い関係性がうかがえます。

今後は、日本でも海外市場のように消費財メーカー等が直接調査を依頼するような機会が増えていく可能性もあるかもしれません。

取引先業種の割合

出典:ESOMAR INDUSTRY REPORT 2014

国内の業界大手のマクロミルやインテージホールディングスも海外企業のM&Aなど海外展開を進めており、海外に将来的な成長余地を見出しているといった業界関係者のコメントもありました。

次は、国内での業界大手のマクロミルやインテージホールディングスやグローバル大手のニールセンの事業をみていくことで、業界大手のトレンドや戦略から同市場を理解していきます。