【オープンイノベーションイベント】中国ユニコーン企業のディープラーニング技術から、大手監査法人のCSRプロジェクトまで。「ローマの市場にて」10月開催報告

2017.11.21 コラム

10月2日にオープンイノベーションフォーラム「ローマの市場にて」の定例会を開催いたしました。

「ローマの市場にて」とは、イノベーションを引き起こす可能性のあるテーマや企業を発掘し新たな産業を生み出すことを目的としたコミュニティで、約4000名の会員が所属する一般社団法人オープンイノベーション促進協議会によって開催されています。(事務局としてミーミルもご協力をしております)

中国のユニコーン企業から大手監査法人、スタートアップなど幅広い業界、組織から登壇

「ローマの市場にて」は、異なる組織に属する専門家が集まり自立的にオープンイノベーションが起きるためのプラットフォームを構築するために、2010年に産業革新機構主導のもと開かれました。現在は西澤民夫さんが代表を務めるオープンイノベーション促進協議会によって独立して運営されています。

10月2日開催当日は、中国のユニコーン企業「センスタイム」の日本代表による画像認識技術の話から、KPMGのCSR活動について、最近注目のトピックスのシニアの働き方についてジェントロジー協会、不動産×ITの「クラウドリアルティ」、機能性野菜の市場についてなど幅広いテーマにて登壇者にお話しいただきました。

なお、次回については12月11日を予定しております。非会員の方についても限定40名にてこちらで募集をしております。

日本から次世代のグローバルリーダーを。アメリカの次世代リーダー育成プログラム“DECA”は20万人以上の学生が参加

今回は、事業会社の新規事業や活動の報告として、大手監査法人の教育関係のCSR活動や福利厚生サービスを提供しているベネフィット・ワンの事業について発表をいただきました。

KPMGのCSR活動「高校生向けの次世代リーダー育成プログラム」。あずさ監査法人 パートナー 公認会計士 倉田 剛

世界4大会計事務所 (Big 4) の一つ、KPMGのメンバーファームあずさ監査法人の倉田剛さん。日本から世界を変えるような次世代のグローバルリーダーを輩出することを目的とし、高校生を対象とした次世代リーダー育成プログラムの企画についてお話しいただきました。

アメリカの次世代リーダー育成プログラム“DECA”は、マーケティング、ファイナンス、ホスピタリティ、マネジメントの分野のリーダー・起業家を育成することをミッションとして設立されました。同プログラムは全世界規模で20万人以上の学生が参加するという規模になっています。しかし、そうした欧米に比べて日本では、学生がビジネスに触れる機会が少なく、起業家精神の育ちやすいとはいえません。

日本でも起業家精神を育て、将来のユニコーン企業を生むためには、高校生のうちからグローバルで活躍する起業家、次世代リーダーを育成するプログラムが必要です。あずさ監査法人では、一般社団法人カピオンエデュケーションズが主催するシリコンバレー流イノベーションサマーキャンプ「GTEイノベーションチャレンジ」を支援しています。日本のユニコーン企業をつくれるようなリーダーがこの活動から生まれることが期待されます。

 

インセンティブ・ポイント活用によるモチベーション向上について。ベネフィット・ワン 中井 崇博

福利厚生のアウトソーシングサービスを提供しているベネフィット・ワンの中井氏が今回紹介していたのは、同社の「インセンティブ・ポイント」と呼ばれる従業員のモチベーション向上のためのサービスです。ベネフィット・ワンはアメリカ、ドイツ、中国、シンガポールなどグローバルに進出しておりリワードポイントの業界では世界No.1の実績となっています。

インセンティブ・ポイントでは、ポイント利用対象や付与基準を自由に設計してポイントを発行できるので、正社員の評価等だけでなく、非正規雇用のアルバイトスタッフの離職抑制、社内だけでなく販売代理店(法人・個人)の販売促進など目的に応じた独自のポイント制度を構築できます。発行されるポイントは、実用的な製品からレジャー施設のチケットまで20,000もの商品と交換可能とのこと。既にソフトバンクやパナソニックなどの大手企業を含め351社128万名に利用されており、2017年度の累計発行ポイントは100億ポイントに到達しています。

「センスタイム」の日本代表が語るディープラーニングによる画像認識技術の向上

当日は、中国のユニコーン企業として知られるセンスタイムの日本の代表、勞氏により、同社の事業や画像認識技術の進捗についての発表がありました。顔認識の研究者として世界的にも著名な勞氏ですが、すでに数多くの領域で応用が進んでいる画像認識技術について改めて説明をいただきました。

画像認識技術の性能向上と金融、自動車などへの応用の広がり。株式会社センスタイムジャパン代表取締役 勞 世竑

画像認識等のディープラーニング技術を提供するセンスタイム。センスタイムはAI技術において世界トップクラスの技術を誇りますが、日本では特に自動運転の領域での進出を検討しています。ディープラーニングを応用することで、従来の技術では感知できなかった暗闇での標識や歩行者の認識も可能になっています。その他にも監視カメラや工場の作業ロボットなど数多くの分野でその技術は使用されています、写真や動画の加工で知られるSNSアプリ「SNOW」にも実はセンスタイムの顔認証が使われているそうです。このように既に様々な場面でセンスタイムの技術に触れています。様々な用途や産業との連携が可能なセンスタイムの技術ですが、同社も日本企業との連携機会を模索されています。

 

IT×不動産や、IoT広告配信サービスのスタートアップの取り組み

スタートアップの事業として不動産領域のクラウドリアルティ、O2Oプラットフォーム・IoT広告配信サービス「ECUW」の発表もなされました。

クラウドファンディングによって得た資金を用いて、遊休不動産を再生し運用。株式会社クラウドリアルティ 取締役 CFO 塗矢眞介

メリルリンチ投資銀行部門、世界最大の不動産ファンド、ブラックストーンにて不動産投資・運用に従事した後にベンチャー参画したという塗矢氏。塗矢氏が、現在CFOとして活動しているスタートアップのクラウドリアルティは不動産に特化したクラウドファンディングプラットフォームを運営しています。クラウドファンディングによって得た資金を用いて、遊休不動産を再生し運用・売却で得た利益を投資家に還元する同社のサービスは、小口の投資を行えることが特徴です。

これまで同社が手掛けてきたのは、京都の町屋や渋谷の保育園など地域活性化をテーマとするプロジェクトなど。クラウドリアルティのようなサービスが一般化し市場が流動化することで、日本の不動産業界全体がより活性化されることが望まれます。

ネットとリアル、日本と世界を融合する、O2Oプラットフォーム・IoT広告配信サービス「ECUW」。Wellsolution社長 矢倉利樹

これまではコンサルティングを専門におこなっていたという矢倉氏。実店舗とECとの対立構造に違和感を覚え、ネットとリアルのマーケティングが循環する仕組みを作りたいという同氏。
そうして生まれたのが、O2Oプラットフォーム・IoT広告配信サービス「ECUW」でした。このサービスでは、ネットとリアルをつなぐ次世代ビーコンを用いて、来客者の属性データを取得し、スマートフォンに直接メッセージを送ることができます。Wi-Fiにつないでいるスマホユーザーの位置情報や属性をキャッチすることで店舗内での人の動きを把握し、店舗のレイアウト最適化や属性に合わせたメッセージを送信することも可能です。
日本の地域活性化への導入からスタートし、将来的にはグローバル進出も考えているという同氏、現状はアライアンス先の開拓を進めています。

 

ハウスキーピング、高機能野菜やクリニック併設のリハビリ特化型デイサービスなど。農業やホテル、介護業界での新しい取り組み

ホテルや農業、介護といった領域でも新しい事業の発表がなされています。

ホテル業界でもハウスキーピングなどは外部委託する流れに。ファシリティマネジメント事業の展開と可能性。株式会社グローバルゲイツCEO 梅村真行

LEDや空気洗浄機、消臭剤など人と環境に良い商品を扱う商社、株式会社グローバルゲイツの梅村氏。グローバルゲイツは3年前に卸先の顧客に事業を譲渡してもらったことをきっかけに、ホテルのハウスキーピングを受託して行う事業をはじめました。今回は、そのファシリティマネジメントビジネスについての発表です。

昨今ホテル業界では、投資ファンドがオーナーとなることも増えています。ファンドが運営すると、費用対効果や効率性をより重要視するために、ハウスキーピングといった業務は外部委託する流れにあります。一方で、インバウンドやAirbnbなどの民泊サービスなどの時流を受け、宿泊施設における清掃員ニーズは増加しています。

そうした中で、ファシリティマネジメントビジネスの展開をしている同社の強みは、適正価格とスピード・品質といいます。30代の若手メンバーを中心に試行錯誤を繰り返すことで品質やスピードを上げていき、3年でハウスキーピング事業は3倍の規模になったとのこと。今後の海外展開も考えています。

 

農業の高付加価値化と健康長寿の観点でも注目される高機能野菜市場。株式会社アダチファクトリー代表取締役 萩部健司

広告、コンサル、農業支援等をメインに行っているアダチファクトリーの萩部氏。今回は農業分野の高機能野菜についての発表です。
高機能野菜は、通常の野菜では全く含まれないか微量しか含まれない有効成分をより多く含んだ野菜のことで、近年注目を集めています。例えば美容や抗酸化作用、血流改善効果のあるリコピンを通常の8倍含んだトマトなどが有名です。高機能野菜を使った商品を売り出したことで売上が3倍になった企業などもあるとのこと。

農林水産振興財団の専門家としても活躍する萩部氏は、地域活性化のためのプロジェクトを多く手掛けているため農家とのつながりが強く、そういったつながりを活かして美肌トマトや低臭ニンニクなどの高機能野菜をプロデュースしています。農業の高付加価値化と健康長寿という2つの意味で社会的意義も強く、運動や食事による健康管理に対する取り組みにスポットが当たっている昨今、こういった事業の市場規模は今後も高まりそうです。

 

「医療」×「介護」×「地域」の「三方良し」のビジネスモデルを目指す。マイスター・ファクトリー株式会社代表 岩見智之

岩見氏が代表取締役を務める株式会社マイスター・ファクトリーの新規事業の紹介です。マイスター・ファクトリーは既存事業としてビジネスインキュベーションやスモールビジネスサポートを行っていましたが新しくシニアビジネス事業を展開します。
ファミタウンと呼ばれるこの事業は、クリニックとの共同経営によるリハビリ特化型デイサービスの運営を完全受託する事業。クリニックに併設のリハビリ特化型デイサービス(ファミタウン)では、エクササイズやリハビリマシンによるトレーニングだけでなく、シナプソロジーに基づいた認知症予防のトレーニングを受けることができます。

クリニックが準備金や運営資金を負担し、ファミタウンを設立後、同社が集客やマネジメントなどの運営を受託し得た利益をクリニックに還元するスキームであるため、介護に対するノウハウなしで拡大が見込まれる介護市場に参入できることはクリニックにとって大きな利点です。

ジェントロジーで考えるシニア活用、そして元ホリプロ取締役が語る人材確保のための企業風土改革

少子高齢化社会におけるシニアの働き方、そしてその中で優秀な人材を確保していくための組織風土といったテーマについてもお話をいただきました。

産業ジェロントロジーアドバイザーにより、シニアの働き方を推進。株式会社自分楽代表取締役 崎山みゆき

「ジェントロジー(Gerontology)」とは、「老年学」や「加齢学」「老齢学」と訳されるようです。高齢社会における様々な課題を解決することを目的としている学問で、加齢にかかわる多様な研究を含み、その対象は、認知機能の変化や身体などといったものにとどまらないようです。特に高齢化では進んでいる日本ではこれらの研究や知識の蓄積が重要になっていくと考えられます。

産業ジェロントロジー協会の代表理事を務めている崎山氏によると、若年層に比べて流動的な知識を獲得する力が衰えるシニアですが、年を重ねるにつれ蓄積される結晶型の知識は80歳になっても成長するとのこと。産業ジェロントロジーアドバイザーは、こういったシニアの特性を把握し労務管理や能力開発を支援する活動を行っています。シニアの戦力化が望まれている今後、産業ジェロントロジーアドバイザーの活用の場は増えていくかもしれません。

 

少子高齢化社会におけるイノベーティブな人材確保・人材育成、及び企業風土変革。一般社団法人彩志義塾代表理事 古川祐倫

三井物産を経て、ホリプロの取締役経営企画室をはじめ企業の重役を長年務めてきた古川裕倫氏。高度経済成長期を支えた「終身雇用制・年功序列賃金・労働組合」という日本型経営の3つの特徴は3種の神器と呼ばれ脚光を浴びていました。現行のエージェントを介した採用形態が定着したのは、高度経済成長期の労働力不足を補うため企業の採用競争が激化した結果といえます。しかしながら人口減少が進み国内マーケットが縮小していくことが予測される現在、優秀な人材を獲得するためには企業の在り方を変える必要があると古川氏は言います。

人材を縛り付ける年功序列や終身雇用制を廃止し多様な働き方を認める企業文化をつくることで、働く人のモチベーションの高い組織になる。それが結果的に企業の直接雇用比率を上げ、ますます企業の生産性を高めるということでした。

中堅企業向け 特注ビジネスコンテンツ。スキルの数値化により生産性の向上を実現。一般社団法人社会整備サポート協会代表理事 河合一広

みずほ銀行やドイツ銀行グループでコンプライアンスの経験を持つ河合一広氏。2012年に河合氏が設立した一般社団法人社会整備サポート協会は、コンプライアンスを中心に社内教育教材を提供し企業価値を高めることを目的としています。企業の特色に合わせた内容へのカスタマイズと、効果測定のための数値化が同コンテンツの特徴で、コンプライアンスの社内リソースが少ない組織にとってメリットのあるものです。

たった1つのトラブルが原因で、消費者や顧客の信用を失い重大な損失を被る可能性も少なくありません。現代企業にとってその重要性が高まっているコンプライアンスですが、大企業と違い中堅企業には専門の部署がない場合が多く、実はコンプライアンス体制を十分に構築・運用できている企業は多くはない。そのような中ではこのように一部を外部化することでコンプライアンス体制を構築することも一つの手段といえます。

 

博報堂やフジクラ、亀田製菓など大企業の新規事業の取り組みから連続起業家まで。次回は12月11日に開催

2010年から続くオープンイノベーションを目的とした「ローマの市場にて」取り組みですが、当時に比べて「オープンイノベーション」という言葉自体の認知度も高まっており、オープンイノベーション促進協議会の会員も既に4,000名を突破しました。

12月11日開催を予定している次回についても、次のような多様な方々が登壇予定です。「大企業の新規事業チーム・担当役員」「スタートアップ」「新規事業の専門家」といった3つのタイプの登壇者がそれぞれの取り組みをお話しいただくことで、様々な連携の取り組みや知見の交換などを起こすことを目指しています。

亀田製菓株式会社 マネージャー 熊谷 武久氏

米菓事業グループ、海外事業グループ、新規事業グループの3グループ制をとっている亀田製菓。お米に対する別視点からの 研究開発~事業化について。

株式会社フジクラ 常務執行役員 相澤 徹氏

フジクラの紹介と、現在行っているオープンイノベーション活動について。

株式会社SEEDATA(博報堂グループ)代表取締役CEO 宮井 弘之氏

先進的な生活者グループに関する調査結果をまとめたデータベースを構築、オンラインサービスとして提供し、中長期視点の研究開発・新規事業企画の構築をサポートする同社の取り組みについて

株式会社 TL Genomics 代表取締役 久保 知大氏

母体血中の胎児由来有核赤血球細胞を単離する新しい技術を開発し、胎児の染色体疾患の有無について、妊娠早期に無侵襲で確定診断が可能な新しい出生前診断技術の研究開発

連続新規事業専門家 守屋 実氏

起業48=29年間、48度に渡る、起業の経験値。48の内訳は、企業内起業+独立起業+週末起業。度重ねた失敗の再発を防ぐための、工夫の記録。数少ないながらも躍進した事業の、振り返りを記録。これらを共有し、新たな起業の起点に。

株式会社WASHIDO雨宮 耕造氏

配管の中を流れるオイルに対する水の割合を計測するWater in Oil モニターについて。

STUDIO TAKUMI 工 素子氏

ストゥディオタクミ代表でディスプレイデザイナー。北イタリアの物作りと衣食住にどっぷり浸かっていた10年間。とっておきのイタリアを日本に、また広くアジアに紹介していきたい。

 

なお、次回は非会員の方も限定40名にてこちらにてご応募が可能です。