【提言】エキスパート時代の到来、いま我々は何を為すべきか

2021.02.19 エキスパート
【提言】エキスパート時代の到来、いま我々は何を為すべきか

2021年2月12日、ユーザベースグループの株式会社ミーミルは、知見提供の実績や評価をもとに有識者を表彰する「エキスパートアワード2020」を初開催しました。本イベントの基調講演には、企業内起業、独立起業、週末起業合わせて50以上の新規事業を立ち上げたプロフェッショナル・守屋実氏が登壇。参加者に向けて、先行き不透明な時代を切り開く心構えについてお話しいただきました。

はじめに

エキスパートのみなさん、こんばんは。「新規事業のエキスパート」として活動している守屋実です。本日は「エキスパートの知見で社会を変える」というテーマで、4つのことをお伝えしたいと思います。

 

キャッチコピーは「51=17+20+14」

まず初めに「51=17+20+14」。この算数は、僕の職業人としての人生を一行で表わしたキャッチコピーです。年齢の51を17と20と14で割っているのですが、これらは全部、立ち上げた新規事業の数です。

最初の17は企業内起業の数です。

大学卒業後、ミスミという会社に就職して、創業オーナーの田口弘さんとエムアウトという会社を創業しました。ミスミで10年、エムアウトで10年の合計20年間で新規事業(企業内起業)を17回おこなっています。

2つ目の20は独立起業の数です。

20年経ったあと、独立して守屋実事務所を設立しました。「新規事業のエキスパート」として活動し、最初に参画したのがラクスル、ケアプロという会社です。

ラクスルはテレビCMでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、インターネットで印刷ができるサービスを提供しているベンチャーです。立ち上げに参画させてもらい、副社長をやっていたのですが、今では東証一部上場企業になっています。

同じ時期に副社長として参画したケアプロは、予防医療事業などをおこなっているソーシャルベンチャーです。これらを含めて、20個の独立起業をおこなっています。

最後の14は週末起業の数です。

具体的にいうと、ご縁があって診療所を購入したり、フィリピンに小学校を寄付したり、表参道でBarをやったりしています。

17+20+14=51。年齢と同じぐらい新規事業をやっているということがキャッチコピーになっています。

このような算数かどうかはともかく、みなさんもご自身の専門性を表わしたキャッチコピーをお持ちだったり、これから考えられたりすると思うのですが、我々エキスパートは世の中に自分なりの「個性」を訴えていくことが大事なのかなと思っています。

 

「エキスパート時代の到来」に何を為すべきか

次のスライドですが、エキスパートが活躍する時代が到来したのではないかと思っています。

これは前々から言われている話なので、僕がなぞってもしょうがないのですが、関連して「会社のプロではなく、仕事のプロになれ!」という本を出させていただきました。

僕に限らず、同じことを言っている人はたくさんいると思います。

しかしながら、もともと「会社のプロから仕事のプロへ」という流れがある中で、この1年はさらに新型コロナウイルスの流行があり、社会の進化が強制的に5年ぐらいジャンプしたように感じます。

もし我々がエキスパートであるとすれば、その5年のジャンプについていかなければなりません。そうすることで初めて、エキスパートとしての価値を出し続けられるのではないでしょうか。

例えば今、三菱UFJ銀行とMIMIRが共催している「フューチャリスト未来会議」に参画しているのですが、会議では20〜30年後の職種類型が以下の4つに分かれると予想しています。

資本家・経営層の「Pure White」。

AI、機械化に置き換えられない最後の確認・判断をおこなう「Operational White」。こちらは旧来のホワイトカラーマネジメントです。

次に、個人のスキルや技術で価値を生み出す「Skyblue」。今の時代では、医師や弁護士などが象徴的かもしれませんが、このようなエキスパート的な人たちがたくさん出てくるだろうと。

最後は自由人的な「Green」です。

三菱UFJ銀行さんもこのように考えているとおり、社会一般においてもこのような方向性になるのではないかなと思っています。

 

守屋実の「ビジネスモデル」

先ほどから申し上げているとおり、ご自身のビジネスモデルや考え方に沿っていろいろと活動されていると思うのですが、僕のビジネスモデルは3つの塊になっています。

1つ目の赤い枠は、最初にご紹介したラクスルやケアプロを中心とした、スタートアップへの参画・投資です。

2つ目の青い枠は、大企業の事業開発室への参画です。

赤い枠ではスタートアップの非常勤創業メンバー。青い枠では大企業の事業開発室の非常勤メンバーというかたちで、とくにスタートアップの新規事業がうまくいくと、緑の枠に書いてあるように上場したり、何らかのかたちでイグジットをしたりしています。

これらが僕の「新規事業のエキスパート」としての仕事です。

この時に「ビジネスモデル」というと「どのような価値を発揮するんですか?」「どのようにマネタイズしているんですか?」という話になると思うのですが、実は赤い枠(スタートアップ参画・投資)ではお金を一切貰わないビジネスモデルで回しています。

立ち上げ期のスタートアップは、当然ですけどお金がほとんどありません。

例えば、創業当時、ラクスルは資本金200万円でした。給料をふんだんに払ったら会社としてはすぐに倒産してしまいますよね。スタートアップには、多かれ少なかれそのような部分があると思います。

そのため赤い枠(スタートアップ参画・投資)では「稼ぐ」「生活する」ということより「やりがい」「腕を磨く」ということの度合いが高いです。

では実際、お金はどうしているのかというと、青い枠(大企業事業開発室参画)で稼いでいるというかたちです。

例えば、博報堂やJAXA、JR、DENSOなどの大企業の事業開発室の非常勤メンバーとして働かせてもらって、稼いだお金をスタートアップに投資していく。そうするとスタートアップが上場することがあるという感じです。

過去そのようなかたちで上場したスタートアップが5社あります。そのようなビジネスモデルで回させてもらっています。

新規事業においてはそのようなビジネスモデルになると思いますが、他のエキスパートには他のやり方があるのかなと思いますので、ご参考までにご紹介しておきました。

 

報酬には「4つのステップ」がある

次に「報酬をどのように考えているのか」という話です。

僕は報酬には4段階あると思っています。

今からご説明することは、少し綺麗ごとのように聞こえるかもしれませんが、自分なりに散々考えて、散々感じたうえで「やはりこれが報酬なのかな」と思っているところです。

まず第1段階は、我々が何のエキスパートになるのかまだ決まってない頃です。大学を卒業したばかりの22歳と例えると、わかりやすいかもしれません。

そのような最初の段階では、やはり「仕事の量稽古」が報酬になるのではないかと思います。

どんどん量稽古をしていくと「こいつやるな」ということでどんどん仕事が集まってくる。自分自身がまっさらな状態で、何でも吸収できるから、それ自体が報酬になるという話です。

第2段階では「個人としての強みを発揮した仕事」が報酬になります。

第1段階で量稽古して、ありとあらゆることをやってみると、好き嫌いや得意不得意などが出ると思います。

これは自己認知もそうですし、他人から見ても「あいつはこの辺が強いな、じゃあこれを任せてみよう」という感じで強みがどんどん増していく。それに比例して報酬が上がっていくということです。

第3段階では「強みを活かした仕事の生態系の確立」が報酬になります。

第1段階で量をこなして自分の強みがわかってきて、他人から見ても「あいつはあれが強いな」となってくると、強いもの同士でどんどん繋がっていく感じになります。例えば、野球の一流選手はサッカーの一流選手と友達になるみたいなノリですね。

自分自身の強みを活かした仕事をやるときに、自分にはない強みを持っている人と繋がることができたりします。

一方的に貰うのは搾取の関係だと思いますが、自分の強みを提供する代わりに、その人の強みを提供してもらう。この共存関係によって、自分の生態系がどんどん強くなっていく。これが第3段階じゃないかと思います。

最後の第4段階では「したいことへの挑戦」が報酬になります。

強みを活かした仕事の生態系が確立されてくると、自分自身がチャレンジしたいことに自由にチャレンジできる状況になってくるということです。

報酬はこのように、4段階で上がっていくのではないかと思っています。

本来、普通の言葉でいうと「報酬=お金」になると思うのですが「仕事の報酬は仕事である」ということです。

量稽古をすると、自分の強みに応じた仕事がやってくる。そうすると強みを交換することができてやがて生態系ができる。最後に自分がやりたいことを自由にやれるようになる。それが報酬の4ステップです。

これにはお金の話がないのかというとそうではなくて、おそらく第3段階ぐらいから急激に報酬が上がっていくものだと思っています。

そのようなことも含めて、我々エキスパートとしては、報酬をこのように考えることが最も健全なのではないかなと。

「報酬=お金」として思っていると、実はエキスパート(専門性)を磨いている暇がなかったり、最終的には複利の効果など、恩恵を被っているエキスパートに負けてしまい、現金的な報酬ももらいにくくなるのではないかなと思います。

 

エキスパートとして、新しい一歩を歩む

最後に、我々エキスパートがこれからの時代、何をどのように考えていけばよいのかということを、僕自身のためにも、みなさんに送るメッセージとしてもお話しします。

とくに今の時代、新型コロナウイルスなど、いろいろと難しいことが多いと思いますが、どんなときでも、前に進んで切り開いている人はいます。

我々エキスパートはその不透明な時代を切り開く先陣であるべきだと思いますし、だからこそエキスパートなんだと思います。

人は考えたようにはならないと思いますが、行なったようにはなると思います。

切り開き続けている人は切り開く人になり、誰かが切り開いてるのを見ている人は切り開けない人になるということです。

成功と失敗の定義でいうと、成功は着手しきれたとき、失敗でも充分やったときは実は成功なのではないかなと。失敗は着手しなかったとき、実行を見送りし続けたときが失敗なのではないかなと思っています。

我々はエキスパートですから、先陣を切って、トライをして、着手をして、失敗しても失敗しても頑張ると。僕は特定の領域において、想定しうるあらゆる失敗をし尽くした人こそがプロだと思います。

成功は努力して努力して努力して、たまたま手に入る可能性の高いものです。

しかしながら、失敗については、失敗して失敗して失敗し尽くすと、実はその領域のプロになれるのではないだろうか。そのように考えています。

そうすると我々は、本質的なエキスパートになれるのではないかと思っております。

新しい一歩を、あなたらしい一歩で歩んでいただきたいと思いますし、今日の「EXPERT AWARD2020」の表彰式・交流会の場所が、エキスパートらしい一歩を歩む機会になったらいいなと思います。

 

記事作成:宮原透

(プロフィール)

守屋実:新規事業のエキスパート

1992年ミスミ入社、新規事業開発に従事。2002年新規事業の専門会社エムアウトをミスミ創業者の 田口氏と創業、複数事業の立上げおよび売却を実施。2010年守屋実事務所を設立。新規事業創出の専門家として活動。
ラクスル、ケアプロの立上げに参画、副社長を歴任後、博報堂、サウンドファン、ブティックス、 SEEDATA、AuB、みらい創造機構、ミーミル、トラス、JCC、テックフィード、キャディ、フリー ランス協会、JAXA、セルム、FVC、日本農業、JR東日本スタートアップなどの取締役など、内閣府 有識者委員、山东省人工智能高档顾问を歴任。2018年にブティックス、ラクスルを、2か月連続で上 場に導く。著者に「新しい一歩を踏み出そう! 」(ダイヤモンド社)がある。