【無人店舗】コスト削減へ省人型店舗にニーズ 顔認証の活用も NEC 納富功充氏

2020.08.26 エキスパート

人手不足が深刻化する日本で、IoT技術を駆使して伸びつつあるのが「無人店舗」です。

無人店舗とは、人工知能(AI)やキャッシュレス決済などの技術を生かし、レジスタッフなどを置かない店舗の総称です。無人店舗は特に中国で導入が進んでおり、中山市賓哥網絡科技が展開する無人コンビニ「Bingo Box」は1号店の開店から半年で300店舗まで拡大。中国国内には、こうした無人コンビニが1000店舗以上存在するとされています。一方、アマゾン・ドット・コムが2018年1月に開業したコンビニエンスストア「Amazon Go」は、アプリにクレジットカードなどの情報を入力することで、レジを通さずに商品を購入できる店舗です。無人ではなく、スタッフは在庫補充を充実させたり客とのコミュニケーションの機会を増やしたりして、サービスの質を高めており、同規模のコンビニエンスストアより売上が5割ほど多いとされています。

日本ではJRグループの無人決済店舗などで実験的な取り組みがあるものの、海外に比べると多くの実績は出せていません。これから無人店舗事業は国内でどのように進むのか、NEC納富功充氏に伺いました。

 

人手不足の日本、「省人化店舗」普及で効率追求

――「無人店舗」の国内普及について、どのようにお考えですか。

納富 無人店舗といっても、完全に人がいなくなるわけではありません。顧客体験、業務効率化など、目的によって「レジレス店舗」「省人化店舗」「レジ無人(セルフレジ)」「夜間無人」「極小商圏店舗(マイクロ・マーケット)」などに形態が分かれます。これらを広義に「無人店舗」とするならば普及すると思っています。
日本では人手不足が社会課題になっており、小売業界でも労働力確保が課題になっていますので、省人化店舗の普及度が高いと予測しています。具体的には、セルフレジ化、バックヤードの業務効率化などです。一方、新しい顧客体験型の店であるAmazon Goは、2021年までに3000店舗を目標としているので、日本にその何割かが出てもおかしくないと思っています。

今後2~3年で小規模店の2割が省人化

――省人型店舗という切り口で、小規模店において無人店舗が20%以上になるのはいつ頃と見込んでいますか?

納富 セルフレジは日本でも早い段階から導入されましたし、スーパーでは利用が進んでいます。コンビニでのセルフレジやスマホ決済、スキャン&ペイなどを含めたら、これから2~3年で20%以上になるでしょう。

――普及の最大の鍵となるのは労働力でしょうか。海外ではコスト低減の目的が強いのでしょうか?

納富 普及が進む目的は業務効率化のためと考えています。海外における普及の背景は賃金上昇や、法律による労働時間短縮などで、より効率化が求められる点も挙げられます。先進国ではコスト削減の手段として、省人型のニーズがあるかと思います。
消費者から見えやすいところでは、レジです。待ち行列による消費者のストレスがなくなるという顧客体験側面と、店としては他の業務に労働力を割り当てられるようになる業務効率化の側面があります。ほかには品揃えや発注などのバックヤードの業務、仕組みにAIの活用ができるでしょうし、カフェマシーン、冷蔵冷凍設備などもIoTで集中管理して、稼働状況や故障予兆(壊れそうな時期)などの情報が取れるようになっていくと思います。

 

客の行動データを集積し、品揃えなどに反映も

――無人店舗の普及を妨げる要素はありますか?

納富 ビジネス面では、目的と手段の整理ができるかということ。新たな顧客体験を目指すのか、業務効率化、省力化なのか。もう一つは、技術的な精度をどこまで上げられるか。精度を上げた時に、どこまで店舗の業務・運用にマッチさせられるか。目的に合わせて技術精度を高められないと実運用に乗らなくなります。

――導入拡大に関する法整備について、関心を持っていることはありますか?

納富 一番気にしているのは、データ活用に関する制約ではないでしょうか。データごとの所有者が誰でどのような利活用していくかという点です。例えば、個人情報(生体情報)をどこまで安全に保有し、どこまで活用できるかということです。実店舗で実用レベルにするときには、法律によるガイドラインがあるとやりやすいでしょう。

――具体的には、どのような情報が重要になるでしょうか。

納富 認証のための個人情報や行動データなどが挙げられます。個人情報という点では、成人認証が必要な商品(酒、たばこなど)を省人化店舗でどのように認証、販売するかなどの仕組みの整備が必要です。行動データという点では、顧客がどんな行動をして商品を選んだか、欲しい商品がないから買ったのか、それとも、最初から求めていた商品を買ったのか。こうしたデータが取れると、品揃えや店の作りも変わると思います。
当社はAI、画像認識の技術などを活かしてチャレンジしたいと考えています。こうした情報を最も集めているのはAmazonでしょう。日本の競合小売大手であれば、それに対抗するプラットフォーム上にそういうデータを集めたいと考えるでしょうから、そこを当社は技術でサポートします。また、データは、皆で共有するものと、個々の企業で差別化のために利用するものに分かれていくと思います。

 

省人化店舗における顔認証の活用

――顔認証の導入自体も今後広がっていくと考えていますか?

納富 QRコードなど、代替の決済方法があるものの活用シーンが増え始めています。顧客体験型の店舗や空港でのニーズはあります。成田空港の税関では2020年から、国内外の外国人旅客の本人確認などを顔認証で行います。外国人旅行者の顔認証を空港で行い、そのデータを企業間で共有できるような世界になれば、その人がどこにいても顔だけで買い物ができるようになるかもしれません。また当社では2020年2月、本社ビル内に「レジレス型店舗」をオープンしました。小売業向けに開発してきた販売管理や顧客管理などの店舗システム、顔認証による入店管理に加え、センシング技術を連携し、商品をレジに通さず決済できます。利用者は、顔認証で立ち止まることなく入店し、欲しい商品を取り、そのまま店を出るだけで、自動的に決済が完了します。レジ人員を配置する必要がないので、人手不足も解消できます

――顔認証について、成長していくための鍵になるのは?

納富 サングラスやマスクしていても顔認証ができる、というような、認証のバリエーションが上がること。それから、開発されていく高度な技術を現場にどう適応させるかということです。

 

個人情報活用のリスクと利便性のバランスを

――マーケットを広げていくための、バリューチェーン上のキーは何でしょうか?

納富 顔認証に対する一般の方々の受容性がどれだけ高まるかと考えています。中国では普及していますが、欧米では難しいと聞きます。顔という個人情報を取られることに抵抗感がある。利便性とリスクのバランスと思います。ただ、コロナ禍においては、商品以外に触らずに済むことへの期待が高まっています。人やモノとの接触が懸念されるなか、キャッシュレスやタッチレスの仕組みは、新しい生活様式にもマッチしたものといえそうです。

今後も目的に応じて、ニーズが増えると思いますので、当社独自技術に拘らず、様々なパートナーとの連携を通じて、深刻化する労働力不足の解決と新しい顧客体験の創出に貢献したいと考えています。

 

記事作成:中山 佳子

 

〈参考資料〉

  • 無人店舗とは/日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO38362480Q8A131C1EA2000/

  • 日本の無人店舗はどこまで進んでいる?/Techfirm Blog

https://www.techfirm.co.jp/blog/unmanned-stores-in-japan

  • 高輪ゲートウェイ駅 無人AI 決済店舗「TOUCH TO GO」がサービス開始/JR東日本スタートアップ

https://jrestartup.co.jp/news/2020/03/2506/

  • 東芝テック 小規模商圏向け「無人店舗」実証実験/流通ニュース

https://www.ryutsuu.biz/it/l090346.html

  • アマゾン・ゴー 無人の可能性は無限大/日経MJ

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO34388550R20C18A8H46A00/

  • Amazon Goの今/Restaurant Management Pro

https://pos-cube.com/inshoku-keiei/tenpo-unnei/amazon_go/

  • 中国の無人コンビニ「ビンゴボックス」/yahooニュース

https://news.yahoo.co.jp/byline/ikedaeri/20180326-00082878/

  • 成田空港が顔認証でより安全に、快適に/NEC

https://jpn.nec.com/safercities/transportation/fasttravel/narita.html

  • 商品をレジに通さず決済可能なレジレス型の店舗/NEC

https://jpn.nec.com/press/201912/20191223_02.html

●レジレス型店舗がついに開店!手ぶらでスムーズな買い物が日常に/NEC

https://wisdom.nec.com/ja/article/2020022701/index.html

  • マイクロ・マーケットに対応した初の『省人型店舗』/NEC

https://jpn.nec.com/press/201812/20181217_01.html

 

納富功充

日本電気株式会社
第一リテールソリューション事業部 事業部長代理
兼)コーポレートアライアンス本部