【ブロックチェーン】耐改ざん性や透明性に評価 企業間での更なる普及が見込まれる 博報堂ビジネス開発局 伊藤佑介氏

2020.08.07 エキスパート

ブロックチェーンとは、インターネットなどのネットワーク上で分散型台帳を実現する技術、もしくは同技術を用いたサービスを指します。データベースの一部(=台帳)を複数の当事者が共有し、個別のシステム内で同一の台帳情報を共有するというシステムで、高い透明性や信頼性をインターネット上で確保できるのが特長です。

台帳に格納されているすべての情報はいつでも閲覧することができ、更新時に参加者間で合意をとることで、内容の正当性と一貫性を確保できることから、第三者を交えずに偽装や改ざんを防ぐトレーサビリティーの確保が可能となっています。信頼性や透明性を確保できるこうしたデータをインターネット上で扱えることから、複数の当事者間で資産や権利などの取引される機会など、様々な用途への活用も期待されています。

一方で、台帳情報の整合性確認に時間を要することからリアルタイム性が求められる用途に向かないこと、技術的な課題があることなどから、活用への模索が続いてもいます。

こうした中、ブロックチェーン技術のメリットや、市場が今後どのように発展するかについて、博報堂の伊藤佑介氏にお話をお伺いしました。

 

耐改ざん性や透明性などが評価され、企業間情報連携に活用

――今後5年以内での、BtoBでのブロックチェーンの利用や普及についてどうお考えですか。

伊藤 企業用途向けのブロックチェーンはいわゆるコンソーシアム型ブロックチェーンが適していると考えています。BtoBでは、互いに利害関係が相反する複数のステークホルダーが、改ざんされることなく信頼できる形で、透明性を保ち公平にデータを共有できるというブロックチェーンの技術的な側面が評価され、企業間情報連携での利用が徐々に進み、それにより新しい共創のエコシステムが生まれてくるだろうと思っています。

――その企業間情報連携による共創のエコシステムが形成されるには、まだ少し時間がかかるということでしょうか。そしてそれがBtoBへ普及していくためには何が必要でしょうか。

伊藤 やはり、普及に向けて一番大切なことは、ビジネスとして利益を生み出すことができる成功事例を作り出していくことだと考えています。これまでは、複数の利害関係の相反するステークホルダーが情報連携できるエコシステムを形成して、利益を生み出すといった状況は作ることは、技術的なハードルが高く実現することは困難でした。今後、ブロックチェーンによってそのハードルをクリアして、企業間情報連携のコンソーシアムが多く立ち上がり、そのエコシステム内での共創で生まれてくるサービスの中に成功事例がでてくることで普及が進んでいくと考えており、われわれ博報堂の取り組みでもそれを目指しています。

 

企業間情報連携のコンソーシアムの実現のポイントはガバナンスとインセンティブの設計

――ブロックチェーンによる企業間情報連携を実現するために何が大切でしょうか。

伊藤 実はブロックチェーンの技術的なことよりも、どちらかというとコンソーシアム内のガバナンスやインセンティブの設計の方が大切です。例えば貿易に関係する企業間での情報連携のためにコンソーシアム型ブロックチェーンを利用して、輸出会社、輸送会社、保険会社、通関会社、税関、輸入会社などの利害関係が相反するステークホルダーが、互いの荷情報を改ざんがされない状態で共有して正しいと信認できるようにする場合、情報連携するためのブロックチェーンシステムを開発することももちろんですが、それよりも重要となってくるのが、どの会社がそのコンソーシアムでどんな役割を果たして、そのコンソーシアムに入ることで、それぞれどんな便益を享受できるかといった全体設計です。

――ブロックチェーンの理解に加え、座組やルールを決める人も大事だということですね。どういう人がその役割を担えると思いますか。

伊藤 コンソーシアム全体の設計ができる人材はまだ世の中に少ないと思いますが、現在は、ブロックチェーンの取り組みを積極的に推進しているシステム会社さんが、その役割を目指すべく、チャレンジしている状況です。今後は、複数の企業をまとめて事業開発することに長けている商社なども、この領域に入っていくのではないだろうかと考えています。

 

企業間情報連携以外では?国内と海外の違いは?

 

――企業間情報連会以外に注目しているユースケースにはどのようなものがありますか。

 

伊藤 コンテンツビジネスにも注目しており、当社でも今年3月に、デジタルコンテンツの著作権を保護するサービス「C-Guardian(シーガーディアン)」の提供を開始しました。
(ニュースリリース:https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/79930/
このようなサービスにより、ブロックチェーンによって著作権が保護され、デジタル上で適切に管理できるようになると、今後デジタルコンテンツの流動性をさらに高めることができると考えています。そして、デジタル上で安全に流通できるようになれば、もっとたくさんのデジタルコンテンツに関する新しいサービスが生まれてくるだろうと思っています。

――海外と日本を比較した時に、ブロックチェーンの活用状況に違いはありますか。

伊藤 海外の方が積極的にブロックチェーンの活用に取り組んでいる企業が多い印象をもっています。
というのも、日本は企業に対する一定の信用が保たれているため、耐改ざん性や透明性を高めて信用を担保することで企業間の取引コストを低減するといったブロックチェーンのメリットが少し発揮しづらいのだと思います。ですので、社会全体の信頼性がまだ低い国での企業間取引や、あるいは社会規範やビジネスルールが異なり信用だけに依存した取引が難しい国を跨いだ国際取引などの場合の方が、ブロックチェーンの活用メリットが活き、それゆえ海外での取り組みが進んでいるという背景があります。

また、ブロックチェーンは、「トラストレス・トラストシステム」と言われることがあります。それは、運営に参加しているステークホルダーが利益相反している関係で、お互いに信用できない(トラストレス)としても、記録されているデータの信頼性は担保(トラスト)できる仕組み(システム)である、という意味です。そのように、トラストレスな関係の企業間取引が多い海外の国の方が、ブロックチェーンが活きてくるケースが多いと考えると、日本は世界的に見ると社会全体の信頼性が比較的に高いため、ブロックチェーン活用という点において、どのようなケースの企業間取引に活用すべきか、より見極めが大切になってくると考えています。

 

ブロックチェーン技術を基点に、メディア・コンテンツ業界で共創のエコシステムを構築し、デジタルトランスフォーメーションを推進する

 

――ブロックチェーン技術を活用した新しいビジネスやサービスの開発を推進するプロジェクト「HAKUHODO Blockchain Initiative」の発足から約2年になりますが、今はどのような取り組みを進めていますか。

 

 

 

伊藤

今年3月に、朝日新聞、小学館関係会社他7社合同で、メディア・コンテンツ業界の企業間情報連携のコンソーシアム「Japan Contents Blockchain Initiative(ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ)」を発足しました。
(ニュースリリース:https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/78307/ )

このコンソーシアムは、日本のメディア・コンテンツ業界 のデジタルトランスフォーメーションを業界横断で加速するためのもので、会員企業でコンソーシアム型ブロックチェーンを共同運営して、コンテンツに関するビジネスの情報連携を行い、その結果として、会員企業で共創して新たなビジネスを生み出すエコシステムを構築していくことを目指してします。広く会員企業をオープンに募集しており、3月当初は7社から始まりましたが、そこからいろいろな企業のみなさまにご入会いただいていますので、ぜひ、ご興味をお持ちのメディア・コンテンツ業界の企業さまがいらっしゃいましたら、コンソーシアムのホームページ(https://www.japan-contents-blockchain-initiative.org/)からお問合せください。

 

 

原稿作成:中山 佳子

 

〈参考資料〉

  • 「HAKUHODO Blockchain Initiative」/博報堂

https://www.hakuhodo.co.jp/news/info/77377/

  • ブロックチェーン・コミュニティ・メディア/博報堂DYメディアパートナーズ

https://www.hakuhodody-media.co.jp/column_topics/event/seminar_forum/20190109_24168.html

  • 仮想通貨→暗号資産 名称変更、規制を強化 改正法成立/朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/DA3S14038461.html

  • エコシステム/マイナビニュース

https://news.mynavi.jp/kikaku/iotyougo-15/   

 

伊藤佑介

博報堂ビジネス開発局