【インタビュー】病院内部に踏み込んでいく、コンサルティング業界から病院経営のハンズオン支援へ。メディヴァ取締役 小松大介(前編)

2017.12.20 エキスパート

少子高齢化が進み、全国的に病院経営が厳しい時代となっています。厚生労働省による平成28年度「医療経済実態調査」によると、国公立を含む一般病院全体の利益率はマイナス4.2%の赤字で、過去3番目の低さとなりました。小松大介さんは、ヘルスケア専門のコンサルティングを担う株式会社メディヴァの創業メンバーで取締役を務めています。これから確実に起きる人口減少という未来に向け、大きな変革が求められるメディカル業界。病院経営の専門家として活躍する小松さんに、これまでのご経験や業界の動向についてミーミル代表の川口が伺いました。

 

医療業界で大きな変革が起きるはず」、マッキンゼーから病院経営支援の世界へ

川口荘史(以下、川口):まず、小松さんが2000年にメディヴァを立ち上げたきっかけについて教えてください。メディヴァ社は医療経営の専業のコンサルティングや運営支援として、独自のポジションを築かれています。

小松大介(以下、小松):大学院を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社にアナリストとして3年弱勤務しました。短い間だったので、あまりコンサルタントという感じでもないですね。当時は、銀行のデータ解析が主な業務。そこで金融の規制改革が行われた金融ビッグバンを経験し、業界の大きな流れのなかでお客様のお手伝いができることにやりがいを感じていました。起業にも関心があり、「次に大きく変わる業界に関わることができたら……」と模索している中で、まだ非効率が存在し、変革の余地がある業界として医療業界に興味を持ちました。社内の医療業界のコンサルタントにも話を聞くようになり、その中で接点を持ったのが共同創業者で現在のメディヴァ代表の大石(佳能子)です。

川口:小松さんはもともとコンサルタントとして医療業界を担当されていたわけではないのですね。むしろ、事業を立ち上げる業界を探していて、その中で次に大きな変革が起きる業界として医療業界に目を付けたと。

小松:そうですね。医療サービスは品質が統一されておらず不満を抱く患者さんも少なくない。だからこそ、いい診療所のモデルを作って横展開できれば、という思いがありました。事業を立ち上げる前に、業界のリサーチや協力者の確保のため、大学教授や医療関係者など業界の有識者に何人も声をかけて会いに行きました。コンサルタント時代にはよくやっていたことなのですが、多くの人に突然連絡をして会いに行きました。ただ、業界外からやってきたコンサルタントの若者に対する反応は良くありませんでした。中には「君みたいな若造が何しに来たんだ!」と怒られたりもしました。業界の閉鎖性も強く感じました。

それでも、そうした中少数ではありますが、共感いただき、暖かく受け入れて協力してくれた方々もいました。日本でも有数の先進医療を誇る大規模病院・亀田総合病院(千葉県)の亀田信介先生、亀田省吾先生、医療法人プラタナス理事長の野間口聡先生です。まさに、このお三方との出会いが足がかりになって、会社をスタートさせることができました。

 

2年で黒字にしましょう」と言える会社はほとんどない

川口:御社ではどういった規模感のクライアントが多いのでしょうか。コンサルティングや運営支援など、病院へのサービス提供方法も様々ですね。

小松:会社全体で年間百件程のコンサルティング案件があり、そのうち60〜70件ほどは病院・診療所・介護施設、10〜20件が行政、20〜30件は企業や健保組合となっています。提供内容もケースバイケースで、運営全体を委託いただいている場合は人事評価まで経営陣と共に行います。

僕は主に病院・診療所・介護施設を見ていますが、そのうち半分強は事業計画策定といった一般的なコンサルタントとしての距離感のものです。残りの4割ほどは1〜2日ほどスタッフが伺いながら特定課題を一緒に解決する。ほぼ毎日常駐し、決裁権まで持つ形に近い状態で解決していくパターンもあります。再生支援はかなり成功しており、お客様からも喜んでいただいているので、今後も広げていきたいですね。

川口:御社は、診療所や病院のコンサルティングおよび運営支援をはじめ、病院の再生、M&A、介護施設の再生・運営、健康経営や疾病管理等の予防事業、医療や介護の海外展開など、多岐にわたります。数ある医療コンサルタントの中で、御社ならでは特徴や手法はどんなところでしょうか。

小松:例えば月1回伺ってアドバイスやコンサルティングを行う顧問契約や調査・分析といった業務は他社でも行っています。ただ、それだけでなくもっと深くまで経営に関わり、「赤字を2年で黒字にしましょう」と言える会社はほとんどない。そこは弊社ならではだと思っています。

クライアントの医療法人の肩書きを持たせていただき、組織の中に入るようにしています。肩書きは、渉外担当や検診センター施設長などさまざま。事務長、本部長の場合もあります。僕自身が当初悩んだ「ビジネスと現場のギャップ」を埋めるため、ドクター、ナース、患者さんにどうすればメッセージが届くかということを意識し、現場に踏み込んで業務に取り組んでいます。

 

病院経営でぶつかった「コンサルタント」と「事業者」のギャップ

川口:医療法人の組織の内部にかなり踏み込む形での運営支援や事業再生をされているのですね。

小松:創業当初から、コンサルティング業務だけでいいのかという問題意識を持っていました。コンサルタントは自分たちでリスクを取っていない、オーナーシップもない。これで本当に現場の改善ができるのだろうか、と。その中で、2000年に野間口先生が院長として開院された用賀アーバンクリニックの運営支援に深く関わることにしました。ここから運営支援が始まっています。

川口:これまで経験のあるコンサルティング業務だけではなく、内部に入っていく運営支援について、当初からうまくいったのでしょうか。

小松:運営支援に入った当初、壁にぶつかりました。実際、ストレス性の胃炎で倒れたほどです(笑)。この理由はやはり、コンサルタントとしての業務と、実際にハンズオンで運営に関わることのギャップです。ビジネスとしてロジックや事業改善の施策が先走り、「売り上げを上げるには?」「無駄は削減」と数字のことばかり指示していました。事業を客観的に判断して合理的な事実や施策を伝えていたのですが、逆にどんどんドクターやナースとの間に距離ができてしまった。クリニックのスタッフとのコミュニケーションがうまくいきませんでした。

結局、ハンズオンでの事業運営については別の体制やコミュニケーション方法に切り替えることでうまくいくようになりました。この反省を踏まえ、コンサルタント時代のようにビジネスとして数字で考える枠組みに医療の現場を当てはめるのは無理だとわかりました。

川口:コンサルタント時代と現在とでは、やり方を変えたのですね。

小松:日々現場で患者さんと接しているドクターやナースが生き生きと働けるアプローチを見出したほうが、結果的に彼らのためにも患者さんのためにもなるし、自ずと経営もうまくいく。自分の方法を見直しせざるをえなくなったんです。

 

実際のハンズオン支援では、内部のラインに踏み込んでいくことが重要

川口:経営の中に入っていく中で、コンサルタントとして学んだことも役に立つところと、逆にその時のやり方にとらわれると機能しないこともあるのですね。

小松:一般的にはコンサルトは「プロフェッショナルになれ」と言われます。クライアントとの間に適切に仕切りを設けていくことがプロフェッショナルとして重要だと。確かにそれも重要ですが、同時に、プロフェッショナルがゆえにお客様との間に距離ができてしまいがち。上からものを言うだけとか、分析するだけとか。そうではなく、お客様の経営を我がごととして一緒に変えていくという考え方を持つようにしています。

実際に病院経営で運営に関わっていくと、コンサルタント的なアプローチではなく、内部のラインに入っていくことが必要でした。ただ、実際に運営支援で医療機関の内部に入っていくと、そこは皆が専門性を持っている集団で、自分は医療については素人です。その中では、コンサルタントとして身に着けた分析能力や課題解決能力が自分の専門性、強みとして活きてきます。

川口:小松さんの著書の「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」でも、ご自身が事務長として経営再建やトラブル解決にあたったリアルな現場での事例などがでてきます。国内の多くの診療所や病院では、実際の運営に課題を抱えているところが多く、むしろ一歩踏み込んで現場を変えてくれる、そうした支援を必要としているところは多いのかもしれませんね。

小松:苦労しましたが、その分、ノウハウを培うことができました。そうした経験から、病院の経営再生支援を業務改善~財務改善、民事再生を含めた法的支援までラインナップを広げることができました。また派生的に在宅医療コンサルティングサービスと在宅医療事業が同時に立ち上がったり、健康保険組合向けにレセプト・健診結果などを分析して医療費を抑えるためのコンサルティングを行うサービスや、産業保険体制の構築により従業員の休職率、離職率を減らすための支援サービスが立ち上がったりと、幅を広げることができました。

川口:実際に多くの病院の内部に入って課題を目の当たりにしているからこそ、こうした医療機関に対してのサービスの幅を広げることができたのですね。最近ではどういった取り組みをされていますか。

小松:診療所から中規模病院、大規模病院と拡大路線を取るなかで経営が大幅に悪化した病院の経営再生の仕事も多く引き受けるようにもなりました。最近では行政向けに介護士の確保についてなどコンサルティングやシンクタンク事業も行っています。ベトナム、タイ、ロシア、中国、UAE、イランなど海外で十数カ所、日本の医療の進出を支援し、ミャンマーでは2012年から乳がん検診のオペレーションを行い、中国・天津では介護のフランチャイズビジネスを立ち上げ、ベトナムでは国立病院と提携して検診センターも立ち上げ準備中です。

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プロフィール

小松大介:東京大学教養学部大学院修了。広域システム専攻。人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、株式会社メディヴァを創業。取締役就任、コンサルティング事業部長。100か所以上のクリニック新規開業・経営支援、200箇所近くの病院コンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。著書:「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業経営を“最適化”させる36メソッド」

ミーミル・クオリティエキスパート「病院・診療所経営 第一人者」