【インタビュー:鈴木啓太】腸内細菌研究によって見出す、能力を底上げする「アスリート菌」の可能性(後編)

2017.08.10 エキスパート

アスリートに特化した腸内細菌の研究・分析を行うAuB株式会社の代表取締役として腸内細菌事業に取り組む元サッカー日本代表の鈴木啓太氏。元テレビ東京アナウンサーの白石さんによるインタビュー。今回はAuB社の今後の展望について、そしてアスリートの立場からみた日本のスポーツビジネスについてお伺いいたしました。

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アスリートの夢を応援するのが自分の夢に

白石小百合さん(以下、白石): 鈴木啓太さん個人として、AuBの事業を通して、どのようなことを実現していきたいとお考えですか?

鈴木啓太さん(以下、鈴木):事業について大きな方向転換をしたとお話ししましたが、こうした過去の推移を見ても分かる通り、事業そのものはどう変化していくか分かりません。ただ、アスリートはとにかく競技そのものに人生をかけていて、夢を持ってみんな頑張っています。私は現役を引退しそのステージから降りたあと、アスリートの夢を応援するのが自分の夢になりました。自分が支援するアスリートが金メダルを取ったら、それが自分の喜びです。アスリートをサポートして彼らの夢を実現させていくのが私の一番やりたいことです。

AuBの事業でみても、腸内細菌が我々にとってメインテーマになっていますが、あくまでアスリートのパフォーマンス発揮を支援するためのひとつの手段に過ぎないと捉えています。将来的に全く違うことをやっている可能性だってあるのです。

今現在は自分たちの主軸が腸内細菌の解析にあるので、事業化に向けて必要なことをやっていきますが、鈴木啓太個人が最もやりたいことはただ一つ、アスリートのパフォーマンス発揮を支援する、という点に尽きます。

その夢を追いかけていたらこのような形になった、というのが正直なところでしょうか。

 

人の能力を底上げする「アスリート菌」にたどり着く可能性

白石:AuB社としては今後の展望をどのようにお考えでしょうか?AuBに夢を託す社員の方々もこれからもっと増えていくと思います。その中で、事業をどこまで大きくするのか、どのようなフィールドに挑戦していくのか、今抱いていらっしゃる事業展望について教えてください。

鈴木:AuBの事業は、食品、医療、スポーツ、多種多様などのようなプレイヤーと組める可能性があると考えています。やれることは幅広いので、アスリート支援に役立つならどんなことでも手掛けてみたいと思いますが、今現在で一番近しいのは食べ物とか、飲料の領域かと考えています。

AuBという社名が表す通り、アスリートを支援する会社であり続けます。当面は腸内細菌の解析を通じてアスリートの腸内細菌バンクを作るという目標ですが、実際に解析を進めた結果「アスリート菌」とでも言いますか、人の能力を底上げする腸内細菌にたどり着く可能性を感じています。これを起点に、一般の方の健康増進やヘルスケアにも裾野を広げられるかもしれません。

ゆくゆくはアスリートを支援するだけではなく、アスリートを応援してくれる一般の方向けにも何か提供したいと思っています。

 

活気づくスポーツビジネス分野での可能性

白石:2020年のオリンピック・パラリンピック開催に向けて、スポーツビジネスという分野も活気づいてきています。

元アスリートの鈴木啓太さん個人として、現在はビジネス界に身を置かれていますが、またサッカー界に戻るといったお考えはあるのでしょうか?

鈴木:将来的にはサッカー界に戻りたいという気持ちもあり、例えばクラブ経営にも大きな関心があります。ですが、まずはAuBを軌道に乗せなければ次のステージに行くことはできません。AuBでも足元で私にできることはフロントマンとしての役割、つまりPR活動だと思っていますので、私が出ることで会社にとって役に立つのであればぜひ出たいですし、そのほかにもAuBの経営をよくすることを全力でやっていきます。

白石:会社を始められたこと、啓太さんらしいという声が多方面から聞こえます。浦和レッズでは、チームキャプテンとしても活躍されました。このようなアスリートでの経験は、会社経営というフィールドでどのように生かされていますか?

鈴木:サッカーで言う監督の仕事がビジネスにおける社長の仕事だと思っています。私自身は監督をやったことがありませんし、経営者としてはまだまだ勉強中の立場です。

とにかくいろいろな経営者の方とお会いして、自分自身の資質を高めるよう努めています。

 

白石:現在は様々な経営者の方々とお会いする機会を作っているのですね。

鈴木:経営者の方との雑談の中でヒントを得ることが多いです。自分自身が足りないことだらけですので、「アスリートをサポートする」という自分の主軸はブレないようにしつつ、その場その場で吸収できるものを最大限吸収するようにしています。

 

スポーツを文化として根付かせ、エンターテインメントに

白石:日本のJリーグも、「DAZN(ダ・ゾーン)」との約2100億円の放映権契約など、ビジネスとしても注目されていますね。アスリートとしての立場でかかわっていた鈴木さんからみて、日本のスポーツビジネスをどうお考えですか?

鈴木:現在のサッカー界は、エンターテインメントとしてうまくいっているのかどうか、文化として根付いているか確信を持って言える人は少ないと思います。

何が必要か。それは、生活に根付くということです。人生の喜びのひとつとしてスポーツというものが生活に入っていかないといけない。いま必要なのは、注目を浴びること。そしてエンターテインメントとして楽しいかどうか。今現在は厳しい状況にあると思っています。

そうした中で、サッカー界にいた自分が外の世界に出て、勉強して戻ってくるということも大事なのだと思います。スポーツは、文化として根付いて、さらにエンターテインメントにしないといけません。

白石:今後、日本でスポーツを文化として根付かせていくことが重要なのですね。

鈴木:メジャーリーグのサッカースタジアムにいくと、みなが皆思い思いの方法で盛り上がる術を知っています。足元では腸内細菌の解析事業を通じて日本人アスリートのパフォーマンス向上を目指しますが、ゆくゆくは日本のサッカーを文化として、エンターテインメントとして昇華させたいと思っています。

 

インタビュアーコメント(白石小百合)

 この事業で目指したい、ずっと先の夢まで語っていただきました。しかし、ときたま、社長でいることの不安も素直に口になさいました。しかし、サッカー界に貢献したいというお気持ちを尋ねると、軽やかに言葉を紡ぎます。目の前のこと、少し先の展開、そしてずっと先のこと…。もしかしたら、ずっと先だと思っていたことがすぐに実現するかもしれませんし、もしかすると違うご縁ができてそちらが太くなるかもしれません。2020年東京オリンピックも近づいており、スポーツ界がより盛り上がってまいりました。今後この事業がどういった形でスポーツ界そして社会に貢献するのか、またお話を伺えることを、楽しみにしております。ありがとうございました!

撮影:Masanori Naruse

鈴木啓太 プロフィール

元サッカー日本代表。AuB(オーブ)株式会社代表取締役。静岡県に生まれ育ち、小学校時代は全国準優勝。中学校時代は全国優勝を成し遂げ、高校は東海大翔洋高校へ進学。その後、Jリーグ浦和レッズに入団。その年にレギュラーを勝ち取ると2015年シーズンで引退するまで浦和レッズにとって欠かせない選手として活躍 。2006年にオシム監督が日本代表監督に就任すると、日本代表に選出され、初戦でスタメン出場。以後、オシムジャパンとしては唯一全試合先発出場を果たす。

白石小百合プロフィール

元テレビ東京アナウンサー。Whitte株式会社 代表取締役。法政大学国際文化学部在学中にスペインのバルセロナに留学し、ゼミでアートを学ぶ。2010年4月株式会社テレビ東京にアナウンサーとして入社。経済番組・情報番組・スポーツ番組・ナレーションなど、多岐にわたり担当し、2017年3月31日付でテレビ東京を退職。同年4月よりフリーとなり、かねてからの興味関心を形にした香りブランド『Whitte』(ウィッテ)創業。