MeatTech市場の今後の展開は?有識者の見解を読み解く

2020.04.13 エキスパート

MeatTechとは、大豆などの植物由来のたんぱく質を加工して食感、味や香りを本物の肉のように再現しているもので、ここでは健康志向の高まりにより需要が高まっている植物肉と、環境負荷の低減や将来的なタンパク源確保のため注目されている培養肉を指します。

近年、米国の大手ハンバーガーチェーンやスーパーマーケットなどで商品の販売が開始されるなど、植物肉は菜食主義など健康志向の高まりを受けてすでに一部で導入が進んでいます。
また、世界的な人口増の中で、将来のタンパク源の確保と畜産による温暖化などの環境負担の解決として、培養肉に注目が集まっています。こうした背景もあり、海外では植物肉、培養肉のスタートアップが次々と立ち上がり、各国の政府でも同領域の研究や新規事業への投資がなされています。

ミーミルでは、そうしたMeatTech市場の今後の展望や課題等について、ご有識者の皆様にご見解をお伺いました。

 

エキスパート

・清水達也:東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 所長

・北村明:元株式会社AOB慧央グループ ヘルスケアユニット食品担当マネージャー

・川島一公:インテグリカルチャー株式会社CTO

・高橋慎吾:株式会社SEE THE SUN執行役員 商品開発部長

・日置淳平:株式会社リープスイン代表取締役

・田中宏隆:シグマクシスディレクター Smart Kitchen Summit Japan主宰

 

トピック

■MeatTechの成長を牽引するキーファクターは?

■MeatTechにおける注目の先進事例は?

■MeatTechを牽引するバリューチェーン上のキーは?

 

MeatTechの成長を牽引するキーファクターは?

>>穀物需給問題の顕在化と肉価格の高騰

欧米のように日常の食事に対する改善欲求が弱く(日本食で健康訴求がある程度満たされる)、畜産業界が生活の身近に無い日本にはベジタリアンは育ちにくく、肉の完全代替品としてはかなり限定的と考えるが、穀物需給の問題で肉の安価な安定供給が困難になってきた時に、まずは加工肉用原料として本格化するとみている。
(北村)

>>東京オリンピック・パラリンピック

オリパラを機に訪日外国人が急増し、食に関する対応がより強く求められる。中でも信条・思想等から動物性食材を口にしない菜食者に対して、飲食店や宿泊施設等を中心に日本の食のホスピタリティが試される。対応が行き届いても間に合わず批判を浴びても、いずれにせよ市場にドライブがかかる方向になると考える。
(高橋)

>>肉の脂感の再現

肉の複雑な味を生み出す脂を、植物由来油脂を用いて再現することが困難な現状がある。ゲノム編集技術を用いた菌類等や、動物細胞培養技術による脂分作出など、「味」を再現するための代替技術の開発がここ数年で進展するのではないか。将来的には、植物由来代替肉と、培養肉との加工肉の原料ベースで融合が進み、多様な加工肉製品が誕生すると考える。
(川島)

 

MeatTechにおける注目の先進事例は?

>>モサミート、研究者マーク・ポスト氏

オランダは先進的なことへの取り組みが早く、マーストリヒト大学教授マーク・ポスト氏は世界の培養肉をリードする存在。同氏がCSOを務めるモサミートは、2013年に世界で初めて牛の培養肉ハンバーガーを発表した。その他、ハラルなど宗教的な要請のあるイスラム圏も、培養肉領域のアクセラレーターになっている。
(清水)

>>シーフード分野:Shiok Meets

生物多様性、環境負荷、健康といった視点から、今後も様々な分野で代替食品が出てくると考えられる。その時どのように新たな分野を定義するのか興味深い。
(日置)

>> ベジラーメン

ラーメン有名店がベジメニューを出し始めている。先進的な料理ではなく、身近なB級グルメにこういった切り口が入り込んでくることが、肉代替の壁を取っ払っていくように感じる。また、主に風味面での新規技術と従来からハンバーグ等へ利用されている大豆たんぱく等などの既存技術とが融合することで、肉の使用が徐々に置換されていくのではないか。
(北村)

>>Just等のベンチャー、大企業やVC

代替品で作った卵、肉を手掛けるJust社は、Just Egg等のシリーズで様々な商品を展開。 また培養肉ベンチャーには大手企業が多数出資しているが、食品大手が出資や共同開発で培ったノウハウで単独のR&Dを始める可能性は高い。 米国にはフードテック特化のVCも多く、業界成長のドライバーである。
(田中)

 

MIMIR社員がBEYOND MEAT(植物肉)とJUST EGG(植物卵)を試食してみた。
BEYOND MEADは通常の肉同様、焼くと大量の油が出てくる上、味・食感においても肉と遜色ないと感じた。
JUST EGGは大豆ベースの味が消しきれておらず、味付けは濃くしたほうが無難だが、焼けていく様はまさにスクランブルエッグそのものだった
(米国にてMIMIR社員撮影、個人の感想であり効果・効能を示すものではありません)

 

 MeatTechを牽引するバリューチェーン上のキーは?

>>味付け、消費者向けプロモーション

加工で注視しているのは味付け。肉そのものの味の再現が難しく、別の味でごまかす傾向があるため。調味料やシェフによるアイデア出し、レシピアプリの進化等、品質向上が突破口。 消費者向けプロモーションにより認知度を向上することも大切。ダイエットや動物愛護など、個人の趣向による積極的な選択肢となり得るか。
(田中)

>>消費者意識・投資家サイドの評価

健康意識の増加に加え、CO2問題やたんぱく質源の枯渇等、環境面に対する消費者意識が高まっており、特にその両軸に対する最適解である植物性肉に関しては社会的な要請として根付く可能性があると考える。また、それらの事業を行う企業を、SDGsやESG等の観点から投資家が評価することも重要なキーになると考える。
(高橋)

>>技術開発・マーケティング

技術開発に関しては、植物代替肉では肉の味の演出が必要で、培養肉では生産コスト削減と大規模化が必須であると考える。
マーケティングについては、植物代替肉に関しては割安感をどう払しょくするかが鍵で、培養肉に関しては社会に対する訴求を慎重に行うことが必須になると考える。
(川島)

>>ティッシュエンジニアリング(組織培養)

先進国において、タンパク質危機を回避するために培養肉を根付かせるためには、栄養を確保できることに加えて美味しいことが重要。 美味しさは食感、肉の厚みによるところも大きく、筋肉質な培養肉を目指している。そのためには日本が世界的にも強みを有するティッシュエンジニアリング(組織培養)が大切になる。
(清水)

 

 

プロフィール

清水達也

東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 所長
専門は再生医療、組織工学
インテグリカルチャーとの共同研究がJAXA宇宙探査イノベーションハブのプログラムに採択、細胞培養技術による宇宙での食料生産技術などを開発している。

 

北村明

株式会社明治屋食品工場、いなば食品株式会社、日本水産株式会社、三越伊勢丹フードサービスにて商品開発等に従事。
その後、株式会社AOB慧央グループにて主にマクロビオティック食品、ベジタリアン食品(ベジ食品)などの開発を担当した経験を有する。

 

川島一公

広島大学 生物圏科学研究科 特別研究員などを経て、日本で唯一の培養肉ベンチャーであるインテグリカルチャー株式会社を共同創業し、CTOを務めている。培養肉生産のためのハードウェアプラットフォーム「CulNet system」の社会実装を目指している。

 

高橋慎吾

森永製菓株式会社のコーポレートベンチャーである株式会社SEE THE SUN 執行役員。
同社は玄米入り大豆ミートZEN MEATやそれを使用した加工食品などプラントベースフードを中心に開発・販売している。

 

日置淳平

キリン株式会社にて生産管理、品質保証、研究・開発部門などを経て経営企画部へ。
現在は同社のコーポレートベンチャーである株式会社リープスインの代表をつとめ、食品業界や地域社会に存在する課題の解決に取り組んでいる。

 

田中宏隆

シグマクシスディレクター。Smart Kitchen Summit Japan主宰
国内大手メーカー、外資系コンサルティングファームを経て、2017年1月よりシグマクシスに参画。ハイテク・製造業・通信、成長戦略、新規事業開発、M&A、実行・交渉等幅広いテーマに精通。料理という領域で日本が進むべき道を明らかにし、新たな産業へ進化させることを目指す。