【スマートシティオピニオン】有識者5名に聞く、スマートシティ構想実現の鍵は何か?

2019.12.20 エキスパート

スマートシティとは、情報通信技術などを活用し、効率的で、環境に配慮され、暮らす人にとって利便性の高い、社会基盤(エネルギー・交通・行政サービス等)を提供する都市の概念です。

人口問題、高齢化に伴う労働環境、オープンガバメント/データ蓄積などの様々な社会的変化を背景に「スマートシティ」への注目が高まっています。

NYのグリーンニューディール、シンガポールのスマートネーション、中国雄安新区、デリー・ムンバイ産業大動脈など諸外国の先進事例が生まれる中、日本でも産官学によるスマートシティ構想が実現しつつあります。

こうした中、5名の有識者の方に、スマートシティ市場の今後の展望や課題等についてご見解を伺いました。

 

エキスパート(順不同)

・川除隆広:株式会社日建設計総合研究所  理事 上席研究員
・西村祐哉:日本電気株式会社 ビジネスデザイン本部所 イノベーションコンサルタント、アクセラレーター
・中村公洋:株式会社日建設計 IoT推進室 IoTエンジニア
・岩井利仁:オープンイノベーションを支援するコンサルティング会社 代表
・関西圏ケーブルテレビ・インターネットプロバイダー IT事業推進 部長

トピック

  1. スマートシティの成長を牽引するキーファクターは?
  2. スマートシティ構想実現のキープレイヤーは?
  3. 先進的、ユニークな日本・世界のスマートシティ事例は?
  4. スマートシティの未来をどう見る?

スマートシティの成長を牽引するキーファクターは?

>>ICT技術の進展、5Gの普及、情報銀行

まちづくりにおいて、計画段階からICTエリアマネジメントの導入を前提としたインフラ整備が進み始めている。
まちの完成に合せ、Society5.0のデジタルツイン相当が実装される。根幹技術として、IoT、カメラ、5Gが実装され、都市OSが整備される。プライバシー問題は、情報銀行の普及により合法化が進む。(川除)

>>都市デザインにおける基本パッケージング

スマートシティ形成における都市デザインは、住民中心の、エクスペリエンス+サービス+エコシステム+ICTを前提としたパッケージング部分と、都市の歴史と文化・ありたい姿・日常生活などを尊重したオーダーメイド部分の最適結合で形成される。その際に新都市形成型PJの事例がケーススタディとして活用されるだろう。(西村)

>>People Analytics

初期のスマートシティでは治安・経済性に関するKPIが定められ、運用改善のサイクルが組まれるだろう。
同時に、人のパフォーマンス・幸福度をKGIとする検討がされることが予想される。そこで注目されるのはPeople Analyticsといった人々のパフォーマンス・幸福度を定量化する要素技術と考えている。(中村)

 

スマートシティ構想実現のキープレイヤーは?

>>データ活用のための官民の連携

スマートシティの実現のキーはデータである。データをどのようにintelligence(知恵)に分析・加工・利活用できるかである。そのためには、勿論、データが必要であり、官民双方が保有するデータを最大限、安全に利活用し、社会的厚生最大化のために、その領域を広げていかねばならない。
土台となるオープンデータ(行政機関個人情報保護法)があり、その上に民間データ(個人情報保護法)を組み合わせる必要がある。
スマートシティ推進は行政主導が有益であり、官民データ活用推進基本法の枠組みを踏まえたスキーム設定が重要となる。(川除)

>>コーディネーターの存在と少数の主体企業

成功のカギは、全体調整ができるコーディネーター/ファシリテーターの存在だと思う。
事業化の最終責任をとるディシジョン企業は1社~2社。参加メンバーは複数社、自治体や国との調整も必要。
非常に骨が折れる仕事だが、コアになるコーディネーターがブレないで取り組むことが、成功への大きな一歩になる。(岩井)

 

先進的、ユニークな日本・世界のスマートシティ事例は?

>>加古川市、札幌市、会津若松市、高松市、他

我が国のSociety5.0の実現に向けたスマートシティ構築として、総務省/データ利活用型スマートシティ推進事業、国土交通省/スマートシティモデル事業、内閣府/戦略的イノベーション創造プログラム/ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術、などで採択・推進されている事業である。(川除)

>>グーグル関連会社が手掛けるカナダ・トロント市のスマートシティ

Sidewalk Labsがプロデュース。つながるのは、デバイスやネットワークだけでなく、都市環境さえも変えてしまう作戦。道路を車の走る場所としての意味からコミュニティのためにその形態さえ変えて使おうというコンセプトは、かなり斬新。(関西圏ケーブルテレビ・インターネットプロバイダー IT事業推進 部長)

 

スマートシティの未来をどう見る?

>>都市OS(都市間連携API含む)の実装へ

スマートシティの領域は、社会・経済・環境・マネジメント(ガバナンス)を包含する必要がある。多様なデータをマッシュアップし施策検討・シミュレーションを行う、または、単一データが複数施策に利活用可能とするには、都市OSが必要となる。PCのアプリケーション同様、個々のサービスは都市OS上で稼働する。(川除)

>>デジタルシフトとアフターデジタルの世界に対応しうる都市機能の形成へ

従来スマートシティは都市基盤や機能のICT利活用の文脈で語られることが多かったが、今後はデジタルシフトとアフターデジタルの世界に対応しうる都市機能形成が必要となる。そのため住民が情報を安心・安全・快適に利活用できる制度や、先進都市をゼロから形成するための一定期間の実証実験や制度形成をサポートする法令も重要となる。
加えて都市にヒト・モノ・カネと情報の流れを誘引する経済圏構築が必要となる。
一方SDGsについても、都市のサーキュラーエコノミー形成が大きく注目されると考えられる。総じて法を規制として捉えるのではなく、イノベーションのサポート、パートナーとして活用することに意義があると考える。(西村)

 

プロフィール

川除隆広 株式会社 日建設計総合研究所  理事 上席研究員、ビッグデータ・建築都市経済グループマネージャー
総務省「ICT街づくり推進会議 スマートシティ検討WG」メンバー

 

西村祐哉 日本電気株式会社 ビジネスデザイン本部所 イノベーションコンサルタント、アクセラレーター

共創をベースとした新事業創出を主な領域に活動中。それ以前はグローバル事業部門で主にEMEA領域でのスマートシティ系事業開発を担当。

 

中村公洋 株式会社日建設計 IoT推進室 IoTエンジニア

現在は東京大学グリーンICTプロジェクトに参加、Society5.0に向けて建物データの有効活用方法検討に従事している

 

岩井利仁 オープンイノベーションを支援するコンサルティング会社 代表

元パナソニック株式会社本社、藤沢サスティナブルスマートタウン事業企画&渉外責任者
現在は起業して新規事業・オープンイノベーションを支援する事業化プロデューサーとして活動。元国立山形大学 産学連携教授、元一般社団法人日本経済団体連合会 起業創造委員会委員

 

関西圏ケーブルテレビ・インターネットプロバイダー IT事業推進 部長

ISPや地デジ化推進、地域おこし支援等に従事。関西圏のケーブルテレビ、インターネットプロバイダーにてIT事業を推進。
ISP推進やカバーエリアにおける山間部自治体への地デジ化推進支援のほか、地域おこし支援なども担当