【プラスチックリサイクル】廃プラスチックの国内循環モデルをいかに構築するか 株式会社TBM 執行役員CMO(最高マーケティング責任者) 笹木隆之氏

2020.08.13 エキスパート

私たちの日々の暮らしに欠かせないプラスチックですが、それがごみとなって大量に海に流出する「海洋プラスチック問題」が世界的な課題となっています。
これに伴いプラスチックの使用量・廃棄量削減やリサイクルが進んでおり、2018年10月には米国の飲料大手コカ・コーラやスウェーデンの衣料品大手H&Mなど約250の企業と団体が、2025年までに不必要なプラスチック包装をなくすなどとした共同宣言に署名。プラスチック包装のリサイクルや堆肥化、代替品生産にも取り組むとしました。
また、翌年には欧州委員会が、有害な海洋プラスチックごみ削減のため、使い捨てプラスチック10品目と漁具を対象とした規制を採択。欧州だけでなく、レジ袋の有料化やストローの販売禁止に取り組む国はアジアやアフリカでも増加しており、大きなムーブメントとなっています。

日本国内ではペットボトルや発泡スチロール容器の回収が、自治体や大手企業の先導で行われてきました。
しかし、これらを受け入れていた中国とタイが2018年以降、輸入禁止を強化したことを契機に、廃プラスチックを国内で資源として循環させる必要性が高まっています。リサイクル手法には、プラスチックの原料や製品に再生する「マテリアルリサイクル」、化学原料に再生させる「ケミカルリサイクル」、熱エネルギーとして回収したり、固形燃料化したりする「サーマルリサイクル」の3種類があります。また、プラスチックに代わる環境負荷の少ない製品のニーズも高まっています。

こうした状況下での、国内リサイクル事業の可能性について、株式会社TBM 執行役員CMO(最高マーケティング責任者) 笹木隆之氏に伺いました。

 

国内の回収インフラ生かし、循環モデル作りに挑戦

――プラスチック製品の市場は、5年以内に大きく変化していきますか。

笹木 確実にイエスです。特に、2050年に海洋プラスチックごみが魚の重量を上回るとされて、危機意識が高まりました。
廃プラスチックのリサイクルに加え、石油由来のプラスチックから植物由来などの代替素材、新素材へとニーズも変わっていく。パリ協定を前提とした気候変動への対応も、SDGsの文脈の中でやらなくてはいけないものになってきました。
法規制はヨーロッパがとても進んでいますが、それ以外の地域でも法施行によって業界のポテンシャルが高まっています。

――法規制が追い風になりますか?

笹木 途上国ではケニアは2017年からポリ袋の製造・輸入・販売等に最大400万円の罰金または4年の禁固刑もあり得る法律が施行されました。フランスは2016年から食料品店等でレジ袋の使用禁止が決まっています。先進国、途上国ともに規制が始まり、プラスチックの依存度を抑え、資源循環を促進するビジネスのマーケット規模は大きくなっています。

――日本国内のプラスチックリサイクル関連の法規制などはありますか?

笹木 バーゼル条約の改正で、2021年から汚れたプラスチックごみ等の輸出規制が始まります。すでに中国には輸出できなくなりました。国内でのマテリアルリサイクルにニーズがありますから、私たちとしては国内の回収インフラを生かした循環モデルを実践していきたいですね。

 

代替製品の原材料調達や生産性向上をどう図るか

――リサイクルマーケットにおけるキーはどのようなことですか?

笹木 リサイクルする側に立てば、まず重要なのは原材料となる廃プラスチックの安定的な調達です。廃プラスチックの流通量や価格に変化があるなかで、安定的な原材料調達が重要と考えます。二つ目は生産性をどう上げるか。リサイクルマーケットを新しい市場と捉えてゼロから作り上げようとすると、設備投資等が大きくなり生産性の向上が難しいでしょう。いかに既存のプラスチック製造工場の設備を活用してリサイクル製品を作れるかが重要です。
また、資源循環のしくみ全体を作るために、廃プラスチックを回収するパートナーを含むさまざまなステークホルダーからどう協力を得るかも課題です。回収~再製品化をデジタルの進化にあわせて考えないと、海外で通用するような循環モデルは生まれないと思います。

 

――注目している事例はありますか?

笹木 

企業ではありませんが、EUではフランス政府がものすごくリードしています。2030年までにヨーロッパで225兆円の循環経済マーケットが生み出されると発表されていて、フランス政府はマニフェストを作ってプラスチック規制や管理対応をしている。雇用を30万人創出するとも環境副大臣が発表しています。EUでは経済成長の一戦略としてサーキュラーエコノミーが位置付けられていて、回収したものより価値の高い製品にする「アップサイクル」の成功事例はアパレル業界でよく聞きます。

日本国内でも、リサイクルマーケットに限らず、プラスチック以外の素材の開発・普及の事例が増えています。大手企業を中心に、上流から下流までさまざまな企業・団体の取り組みが近年盛り上がっていると思います。弊社もよりコミットしていきたいと考えているのが、「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」です。350社・団体が加盟するCLOMAでは参加企業・団体の連携により、社会実装を念頭にした国内のプラスチックリサイクル事業や循環利用の推進、新素材の開発等が行われています。

新素材普及の具体例としては、弊社のLIMEXという素材(石灰石を主原料とするプラスチック・紙の代替素材)を用いた福井県・鯖江市や神奈川県との連携事業があります。鯖江市は国内の業務用漆器のシェア8割を占めており、器の素材には主にプラスチックを用いていましたが、この事業ではリサイクルしたLIMEXに変更して漆でコーティングするなどの取り組みをしています。今後は、CLOMA等の連携も活用して用途や展開場所を拡大し、LIMEXの循環のしくみを構築していく予定です。

現在、代替製品の材料となる樹脂や、植物由来、生分解性の樹脂の価格が一時的に上がっています。後者については、アジアでその製造工場が建設される予定があり、量産化によって価格は変動していくと思われます。こうした課題にも、単一企業ではなく、企業・団体が連携して取り組むことで資源への依存を低減し、社会全体の環境負荷を抑えていきたいと考えています。

 

コスト意識が高い日本企業へのマーケティングが重要

――製品が高くなる場合、BtoCでは消費者側の負担が大きくなることは受け入れられていますか?

笹木 消費者が負担分を払っても、購入されているケースが多いです。

――環境負荷軽減のためですか?

笹木 日本には、施策に沿って柔軟に対応できる国民性があると思います。
一方、BtoBのユーザーはコスト意識が高いですね。環境素材というだけでは購買判断までは至らないケースもあると思います。例えば、通常のレジ袋の価格が1だとしたら、LIMEXの袋は1〜1.5くらい。紙の袋はLIMEXの袋より高価で、紙よりLIMEXが安いということでご利用いただくこともありますが、エコロジーとエコノミーの両立を意識して、マーケット追求をしていかなくてはいけないと思っています。
他方で、法規制や消費者の意識変容に伴って、「一銭でも価格が上がったら導入しない」というような硬直的な企業は減りつつあるという実感があります。企業として環境面での責任を果たしたい、あるいはLIMEXによる経済や環境への一歩踏み込んだ取り組みに参加したいという意思決定が多くなっていると感じています。

――将来的には、御社のような素材メーカーが新しい素材を作り、新しい循環型の社会を実現するという文脈でしょうか?

笹木 その通りです。弊社の最近の展開として、世の中に排出される廃プラスチックを適切に再生利用するため、再生材料を50%以上含む素材「CirculeX(サーキュレックス)」を発表しました。人口増加で資源が枯渇し、都市化することで集中型の資源利用が進む、そこで循環型社会を作っていく。回収インフラがある国ではそれを活用し、資源利用による環境負荷を低減しつつCO2削減に貢献していく。回収インフラが作りにくい、中国や東南アジアなどの都市部ではないエリアでは、その地域に合った環境負荷が低い素材を考えていく。回収、そしてアップサイクルの比率が高まれば、海洋流出せず、しても影響を与えない素材も同時に目指していければと思います。
環境負荷を下げていく二つの道筋が、今後5〜10年を見据えたときに、素材メーカーに問われているのではないでしょうか。

 

SDGsが示す2030年が一つのタイムライン 環境対応は企業にとって必須に

――業界における大きな転換期は、5年程度で訪れますか?

笹木 国内外の法規制や潮流を踏まえると、プラスチック利用の見直しは2025年頃には企業や市民の取り組みのレベルにまで浸透している必要があります。今、ネスレやスターバックスは2020年や2025年を一つのターゲットにして取り組みをしています。堆肥化可能な素材にしたり、プラスチックストローを全廃したり。もう一つは2030年に目標を定めているSDGs。このゴールに対してのコミットが求められます。それが一つのタイムラインになるでしょう。

――SDGsなどは外資系の会社が本格的に展開していますが、日本企業はどうでしょうか?

笹木 SDGsに限らず、環境対応をしないとネガティブスクリーニングの対象にされてしまい、機関投資家の投資対象から除外されてしまいます。ここ数年でESG投資の高まりは感じますし、投資家が企業にプラスチック対策を求める動きもこれから更に活発化して、要求事項も体系化されていくと確信しています。

 

原稿作成:中山 佳子

 

〈参考資料〉

・海洋プラスチック問題について/WWFジャパン

https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html

・リサイクルシステム/経済産業省

https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/research/h16fy/model16-3_5.pdf

・プラスチックを取り巻く国内外の状況/環境省

http://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-01/y031201-2r3.pdf

・2050年には海のプラスチックの量が魚を越える?!/NATIONAL GEOGRAPHIC

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/18/053000010/053000002/

・ケニア、世界で最も厳しいポリ袋禁止令が施行/Newsweek

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/09/post-8389.php

・廃プラスチックの処理、困っているの?/朝日新聞2019年5月30日付朝刊

https://www.asahi.com/articles/DA3S14035342.html

 

 

笹木隆之

株式会社TBM 執行役員CMO(最高マーケティング責任者)