【海外進出:カンボジア】安定的な経済成長を遂げるカンボジア。タイプラスワンの可能性

2017.08.06 海外市場

GDP成長率7.0%、安定的な経済成長を遂げるカンボジア

カンボジアの実質GDP成長率は、7.0%(2015年)。GDP成長率は2011~15年では7.0%を超える推移となっており、数年間安定的な成長を実現しています。

同国における製造業とサービス業の拡大が、これらの高成長をけん引しています。貿易額で見た場合でも、2015年の貿易額は前年比14.2%増で、輸出入ともに増加しています(経済財政省関税消費税総局)。

カンボジアの実質GDPの推移と成長率予想

出典:IMF World Economic Outlook Database, April 2017

2016年の経済成長率は7.0%、2017年は6.9%と予測され、それ以降も2020年まで6.5%~6.8%の高度成長が続く見込みです。

2016年11月にも、国際通貨基金(IMF)はカンボジアとの政策協議で同国経済の先行き見込みについて前向きな評価を下しています。(NNA記事「【カンボジア経済通信】IMF、マクロ経済の好調を評価 第300回、2016年11月18日」http://www.nna.jp/articles/result/1535183

このように、引き続きカンボジア経済は順調に推移していく見込みです。

 

東南アジアにおけるカンボジア。一人当たりGDPは東南アジアでも低水準

タイプラスワンとして、生産拠点として注目を集め、その労働力が魅力的なカンボジア。東南アジア諸国の中で見た場合の、その経済的な規模、成熟度はどの程度でしょうか。

各国のGDPをみてみると、カンボジアは、タイやマレーシアはもちろん、ベトナムやミャンマーと比べてもGDPが小さいことがわかります。

カンボジアの経済成長はアセアンにおける経済の底上げにおいても非常に重要だといえます。

名目GDP (USD bn) 2015年推定値:東南アジア諸国比較

出典:IMF World Economic Outlook Database, April 2017

さらに、一人当たりGDPでみると、タイプラスワンでよく比較されるミャンマーと同水準です。

カンボジアは、ミャンマーと並び所得水準は東南アジアでも最低水準といえます。

カンボジアの経済は農業依存度が未だに高く、これが所得水準の低さをもたらしています。これらの農業依存度を下げ、製造業とサービス業を成長させていくために、その安い労働力を武器に労働集約型の外資企業の誘致を積極化しています。

一人当たり名目GDP(USD) 2015年推定値:東南アジア諸国比較

出典:IMF World Economic Outlook Database, April 2017

 

GDP成長率でみた場合、カンボジアは東南アジア諸国でも屈指の高成長を示しています。

このようにカンボジアは、一人当たりGDPでは最低水準であるものの、東南アジア諸国でも屈指の高い経済成長率の国であることがわかります。一人あたりGDPは低水準であるものの、近年の経済成長から、プノンペンでは高級品など購買力の高い層も増えつつあるようです。

実質GDP成長率(%) 2016年及び2017年成長率 推定値:東南アジア諸国比較

出典:IMF World Economic Outlook Database, April 2017

 

カンボジアの人口ピラミッド、若年労働力が豊富な人口構成

一人当たりGDPでは比較的近い水準のベトナム、ミャンマー、カンボジアですが、人口で見た場合、ベトナムの9,167万人(2015年)、ミャンマーの5,184万人(2015年)に比べ、カンボジアの人口は1,554万人(2015年)程度です。

人口(百万人) 2015年推定値-2022年予想値

出典:IMF World Economic Outlook Database, April 2017

2022年での人口の成長予想をみた場合、東南アジア諸国では、インドネシア、フィリピン、ベトナムの増加は顕著です。一方でカンボジアも1,725万人(2022年)と増加していく見込みではありますが、もともとの人口規模からそれほど大きな伸びは期待はできません。

東南アジア諸国で見ても人口規模は大きくないカンボジアですが、人口の増加基調は継続していくようです。

カンボジア人口推移(百万人)

出典:IMF World Economic Outlook Database, April 2017

一方で、特徴的なのがカンボジアの人口構成です。

内戦の影響もあって、カンボジアでは中年以降の層が少なく、相対的に若年層が非常に多い。30歳未満が60%を占め、40歳未満では75%を占めています(2015年推計)。

人口ピラミッドでみてわかる通り、35歳以降から上の層は、35歳未満に比べて非常に少ない構成となっています。就労人口が多いことは今後の経済成長にとっては非常にポジティブです。このような若年労働力と、賃金の低さが生産拠点としての魅力につながっています。

さらに将来的にはこれらの若い層の所得が増えていくことで、購買層が増大し、消費が拡大し市場としても魅力的になっていきます。

カンボジア 人口ピラミッド(2015年推計、千人)

出典:UN, Demographic Yearbook system, Demographic Yearbook

 

経済の好調が続くカンボジア

カンボジアは、その人件費の安さと豊富な若年労働力から労働集約型の事業にとって生産拠点を設けるには魅力的な国です。

衣類が主要産業であり、その輸出で経済が成長しています。特に米国向けにアパレル製品の輸出は増加しており、米国でもニットアパレルの輸入相手としては、アジア勢の存在感が近年は大きくなっている傾向にあるようです。

一方で、経常収支は赤字が続いています。石油製品、車両や建設資材の輸入も伸びており、結果として貿易収支は30億ドルを超える赤字(2014年)となっています。

輸入統計を見ると、織物・製靴、その他の製造原料の比率が大きく、輸入全体の半分以上を占めています。次に石油製品、車両等と続いています。

インフラ工事関連での建設資材輸入も拡大しています。都市部にて、ホテル、アパートメント、オフィスビルなどの建設ラッシュで、建設資材が必要となっています。日本からのカンボジアへの輸出は、車両や建設機械等が主になっているようです。

輸入統計(品目別) 2015年

出典:カンボジア経済財政省関税消費税総局

 

カンボジアからの輸出の内訳をみると、衣類及び付属品が7割以上を占めており圧倒的です。輸出の伸びがカンボジアの経済成長において重要な役割を果たしており、それらは安い労働力のために進出してきた外資企業によってもたらされているともいえます。

 

輸出統計(品目別) 2015年

出典:カンボジア経済財政省関税消費税総局

プノンペンでは日本の中古品のリサイクルショップが数多くみられるようになり、衣料品、雑貨、自転車などが売られています。カンボジアは非製造業分野への外国投資に対する規制が厳しくないため、中小規模の非製造業の投資が活発化している傾向にあります。

その他の特徴としては、カンボジアの観光資源を活用したサービス業です。カンボジアといえば世界遺産であるアンコールワットを思い浮かべる人が多いでしょう、観光業ではそのアンコールワットを中心に世界各国からの観光客が増加しています。国外からの観光客数は 500 万人を超え、日本からの観光客も今後さらに増えることが期待されています。

 

最低賃金の上昇など、経済成長におけるリスク

カンボジアの「タイプラスワン」としての魅力の一つである安価な労働力ですが、最低賃金は今後上昇していくことが予想されます。

最低賃金の引き上げ率は、2013年から2015年にかけて毎年前年比25%となっていましたが、 2016 年は 9.4%、2017 年は 9.3%にとどまっている状況です。

ただ、JETROが 2016 年 10~11 月に実施した「2016 年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調 査」によると、カンボジアの企業で「従業員の賃金上昇」を経営上の課題としている企業の割 合は 69.7%(複数回答可)と、前年度の 62.7%を上回り、アセアンではインドネシア(82.2%)、ベト ナム(75.5%)、ミャンマー(75.3%)に次ぐ高さだったそうです。

このように、カンボジアがアセアン諸国の中で、その安価で豊富な労働力という点で確保していた優位性を維持できるかは今後も注視しておく必要があります。

さらに、カンボジアでは「2018年問題」が指摘されています。不動産業界をみると、これまでの建設ラッシュによって、2018年に大型レジデンス、複合施設が多く完成することで、供給過剰となるリスクがあります。

また、2018年は国民議会選挙の年でもあり、選挙の結果によっては、最低賃金が大幅に引き上げられ、経済成長の鈍化がもたらされるリスクもあるとみられているようです。

 

カンボジアの今後の見通しについて

世界銀行は、カンボジアでは縫製品輸出と建設業、観光業、農業が 2017 年も経済成長を牽引するとしています。

また、「カンボジア・アウトルック・コンファレンス」にて、フン・セン首相は 「『カンボジア産業開発政策 2015~2025』で掲げた目標を着実に達成す ることで、2030 年に中所得国、2050 年には高所得国の仲間入りをすることができるだろう」としています。

今後の海外からの直接投資の誘致について、「タイプラスワン」でも、カンボジアとミャンマーはライバルとみられています。人口規模ではミャンマーがカンボジアの4倍あるので、その点ではミャンマーは労働供給量としても市場としても魅力的といえるでしょう。ただ、カンボジアは規制も緩く外資が進出しやすい環境であり、インフラ整備の進捗を含めて、今後は両国の経済成長について注視していく必要があるでしょう。